東京から、60km超。
品川駅過ぎの餃子エイド以降、水分以外の補給をせずに、5時間以上走り続けてきたので、僕は、流石に疲れていた。精神も身体も限界に近い。
思っていたほど暑くはなっていなかったが、猛烈な風が吹いていて、心が折れそうになる。
そんな時に、こんな情景を見たら、我慢できるわけがなかったのだ。
「中華料理 大陸」。
外見は、いかにもベタベタな、昭和の中華料理店。
店頭ディスプレイも何もなく、お世辞にも綺麗とは言えない。実にノスタルジックなムードを醸し出している店だ。
下調べも何もしていなかったので、若干不安はあったものの、人が、どんどん吸い込まれるように入っていく。
場所はもう、鎌倉エリアに入っていたが、観光客っぽい人だけじゃなく、地元の人っぽい人がふらりと入っていたので、多分安心できる店だろう…と思った。
入店。
とりあえずメニューを見渡す。まさか、中華料理店に餃子がない…とは思えなかったが、一瞬見つからなかったので、ちょっと不安になる。
単に、「餃子ください」と言えばいいのかもしれないが、注文したあと、「ないよ」と言われると、そのまま出て行くのも気まずいので、僕は、店の真ん中に佇み、焦りながら探した。
…と。
あった!
なんだか、後から書き足したような、とってつけたような場所に、ぽつんと書かれていたので、ちょっと不安になる。
しかし、もう、後戻りできない。
カウンターに座って、「餃子ひとつください」と注文。
店内は、テーブル数卓と、カウンター。水はセルフサービス。カウンターの下には、古い週刊誌。
何をとっても《ベタベタ昭和》な感じの店で、僕は、その店内情景も写真にとっておきたかった。
しかし、結構賑わっていたし、店主らしき調理人の方が、ちょっと気難しそうだったので、自粛した*1
カウンターで、バッテリーが残り少なくなっていたiPhoneを充電しながら、餃子ができるのを待つことに。
餃子は、冷凍ではなく、しんなりした生餃子から焼くようだったので、ちょっと期待が高まる。
餃子が焼き上がるのを待っている間、隣で食べている人をそれとなく眺めていたら、ワンタン麺が黄金色(!)で、とても美味しそうだった。*2
さらに、ビールも魅力的で、僕は大いに心が揺れた。
が…。
北鎌倉まで来ているとはいえ、あと10km弱は走らなければいけないのだ。ビールを飲むには、まだ早い。
そもそも、ゴールの江ノ島に着いたら、打ち上げビールと美味しい料理が待っているのだ。我慢、我慢。
僕は、はやる気持ちをぐっとこらえて…待つこと10分。
餃子が来た!
iPhone SEとの比較でおわかりのように、それほど大ぶりな餃子ではなく、一瞬、ちょっと物足りないかなぁという印象を受けた。
これで、ゴールまでのスタミナがつくだろうか…?と思ったのだ。
しかし、一口囓ってみると、その予想は意外な方向に裏切られる。
その具は、野菜中心…というか、ほぼ野菜で、となると、普通はマイルドな味になるのだけれど…。
ニンニク感がハンパじゃない!
具の半分は、ニンニクのみじん切りなんじゃないか?と思えるほどw
昨今「ニンニクなし餃子」を売り物にしている店が多い中、それに対する挑戦じゃないかと思えるほど、強烈。
平日のランチなどで食べたら、午後は、接客できなくなるだろうと思えるレベル。ブレスケアが、1箱ぐらい必要だ。
しかし、疲れがたまっていた僕にとって、この、ニンニクガッツリ餃子は大いに救いになった。
僕は、身体に大きな力が漲ってくるのを感じながら、退店。
店を出ると、すぐ、北鎌倉駅があった。
観光客も多数訪れる駅の至近に、いかにも昭和な感じで佇む中華料理店。
外国から来た人たちが、あの餃子を食べたら、いったいどんな感想を抱くのだろう…?と思いつつ、僕は、最終目的地に向けて走り出すことにした。
江ノ島までは、あと、約10km足らず。ガッツリニンニクでスタミナも十分補給できたし、さぁ、ラストスパートだ!
と、思っていたのだけれど…。