山手線の駒込駅東口を出て左。徒歩0分。
さつき通り商店街の入口に、その店は存在している。
店の名は、珍々亭。
開業1963年。今年で創業58年目になる「ザ・昭和の町中華」店だ。
この一等地で営業が続いているということは、地元に愛されている店なのだなぁということがわかる。
緊急事態宣言中は、休業していた時期もあったようだが、めでたく復活。
昨日の東京は、氷雨が降り続き、およそ10月とは思えない寒さだったけれど、この日は、およそ10月とは思えないぐらい暑かった。
しかも僕は、ここまで走ってきていたので、尚更。
だからもちろん、身体はカラカラに乾いており、ビールの受け入れ体制は万全だった。
あぁ、昼間からビールが飲める幸せ。
長い間、理不尽な禁酒令で苦しんでいただけに、僕は、その喜びに胸を震わせながら入店した。
店内は、カウンター席とテーブル席。
円卓もある。
まだ12時前ということもあって、先客はひとりだけ。
しかし、僕が店を出る頃には、かなりの席が埋まっていたので、やはり、地元に愛される店なのだなぁということがよくわかった。
カウンター席の横に、ドカンと積まれたビールケース。
緊急事態宣言中は、お蔵入りになっていただろう瓶ビールたち。
しかし、もう大丈夫。オジサンは君たちの復活を待っていたぞ。
ということで、もちろん僕は、瓶ビールを注文した。
テーブルの上には、ザーサイが置かれていた。嬉しいことに食べ放題だ。
僕はそれを、たっぷり盛り付けさせてもらって…。
ビールと競演させた。
ザーサイの塩気は、ビールとの相性抜群だから、僕はまず、それを一口つまんで、ビールを飲もうとすると…。
しょっぱい!
と、思わず叫びたくなるぐらい、それは塩辛かった。
高血圧の人が食べたら、危険なんじゃないかと思うレベル。
僕は、常々貧血で苦しんでいるほどの低血圧症で、しかも汗をたっぷりかいていたので、塩分をとることは問題なかったが、それにしてもしょっぱい。
何しろ無料だから贅沢は言えないのだけれど、もう少し何とかならなかったのかと思う。
ただ、もちろんそのしょっぱさはビールに合う。ビールを飲まずにいられない。
このままでは、ザーサイだけでビール1本を消化してしまう。
メイン料理を注文しなければ。
やおらメニューを眺めてみる。
オーソドックスな中華料理が並んでおり、その価格も庶民的。
気になったのは、「ギョウザ」の欄に値段が表示されていなかったこと。
えっ、もしかして取り扱っていないのか?と、一瞬焦ったが、それは杞憂だった。
この店では、テーブルのメニュー表以外にも、壁にもメニューが掲示されており、その中に、餃子が存在していたからだ。
餃子は、5ケで350円。
その他に、小盛(3ヶ)で210円、大盛(8ヶ)で560円の表示があった。要は1ヶ70円ということらしい。
こんなん、大盛に決まってるじゃないか!
だからもちろん、僕は大盛を注文。
ライス大盛り無料なんていう店はよくあるが、餃子大盛り無料の店もあったらいいのになぁ、などと思いながら待っていると…。
大盛餃子がやってきた!
こんがりとしたその焼き色は、実に美しくて魅惑的。
餃子の上に餃子が重なって並べられ、「大盛」感をアピールしている。いやぁ、良いぞ。ほんと良い。
やっぱり大盛にしてよかった。
史上最強の相棒、ビールとの競演。
切っても切れない筈の関係であるこの両者を、無理矢理切り離した「禁酒令」の罪は重い。
それについて、言いたいことは山ほどあるが、とりあえず、今は、再び出会えた両者に乾杯だ。
僕は、そんな思いを胸に抱きながら、ひとくち餃子を囓ってみた。
ニンニクだ!
と、思わず叫びたくなるぐらい、ニンニクのパンチが利いていた。
しかし、それほど癖はなく、噛みしめていくと、丁寧に作られた餃子だということがわかる。
肉と野菜のバランスも絶妙で、町中華の餃子は、こうでなくちゃ!と思わせるぐらいの懐かしい味だった。
下味もしっかりとついているので…。
その味を邪魔しない、酢胡椒が合う。
そしてもちろん、ビールとの相性は抜群だ。
大盛にしたのはもちろん正解だが、僕は、さらに「おかわり」をしたくなってしまったほど。
この日は、もう1軒ハシゴをする予定だったから、グッとこらえたけれど、ビールとの組み合わせならば、大盛でも足りないと思うぐらい、最高の餃子だった。
今度訪れるときは、「超大盛はできませんか?」と聞いてみようかと思うw