前回までのあらすじw
週末の夕暮れ。トキワ荘マンガミュージアムからの帰り道。
僕は、トキワ荘ゆかりのマンガ家たちが愛した店「松葉」で、餃ビーを堪能する予定だった。ところが、この日は、昼から大行列になっていたとのことで、全て完売。
僕は、大きなショックを受け、頂点まで高まっていた《餃ビー気分》を納めるべく、一歩を踏み出した。
「松葉」に振られた僕は、西武池袋線の東長崎方面へ向かうことに決めた。
東長崎は、僕にとって未開拓エリアだったが、安くてうまい町中華のメッカとして知られている。
エリア内には、以前から行きたいと思っていた店もあったため、ひとまずは、その店を目指して歩くことにしたのだ。
ただ、SNS経由の情報によると、その店は、連日常連で大人気になっているらしく、僕は、「行列だったら嫌だなぁ…」という思いもあった。
この日は、結構歩き回っていたので、ちょっと落ち着きたい気分があり、その点で若干の不安は残った。
そんな思いを抱きながら、東長崎駅方面へ向かっている途中、こんな店を発見。
中華料理「五番」。
僕はノーマークの店だったのだけれど、だからこそ逆に、思わぬ店を発見できて嬉しくなった。
縦から見ても、横からみても、《町中華》という渋い佇まい。悪くないぞ。
店の入口に、商品サンプルがあるだけで、《あぁ、町中華だなぁ》と、心が和む。
そして何より、「五番」という店名がいい。
「一番」とか「十八番」とか、番号のついた中華店はよくあるけれど、「五番」というのは、ちょっと珍しいのではなかろうか。
僕は、ここで《ビビッ》ときたので、入店することに決めた。
店の中は見えなかったが、なんとなく、僕は、空いている筈という確信があり、店の扉を開けた。
案の定…というか、想定以上。店の中には、誰一人いなかった。
店内は小綺麗で、カウンターの他、テーブル席が2つ。
落ち着いた雰囲気で、悪くない。僕が入店した後、常連らしき人がやってきて、このテーブルに座り、店員さんと和やかに話していた。
カウンター上のメニューを眺める。
もちろん餃子とビールは決定。本格的に食事をするなら、一品料理を注文するのだが、この日は、ハシゴをする計画だったので、餃子以外は、軽めに済ませたかった。
となると、餃子が焼き上がるまで、ビールの《アテ》をどうするか。
居酒屋ならば、お新香や枝豆などが普通にあるので、僕は、大抵それで時間を繋ぐ。
しかし、町中華の場合、そういったものが用意されていないことも多いので、そういった時に、ちょっと悩むのだ。
そしてこの店には、スピードメニュー的なモノは用意されていなかった。
「餃子と一緒にビールを出してもらう」というのが無難な方法なのだけれど、この日、僕は歩き回って疲れていたため、ビールを待つのがもどかしかった。
ということで、僕は、「とりあえず餃子とビール」と注文をしてしまった。
すると…。
すぐにビールが出てきた。
グラスが冷えているのは嬉しかったし、ビールも瓶なので、生ビールよりは冷めない。
また、山菜的なものが同時についてきた。
ほんの僅かの量だったので、アテとしては無力に近いが、お通し扱いではなく、あくまでサービス品なので、贅沢は言えない。
いやはや、このビールが美味しかったこと。中瓶で500円だから、まぁ、標準的な価格だろうか。
一気に飲みきってしまいたい感情を抑えながら、待つこと10分程度で…。
焼餃子がやってきた!
実に見事な焼き色で、惚れ惚れする。食べる前から、「これは間違いない」と思わせる色だった。
餃ビーの揃い踏み。
それほど大きなサイズでもない餃子が、6個で500円。決して安くはない。が、それだけに味も期待できる気がした。
囓ってみる。
美味しいぞ!
なんと言っても、丁寧に焼き上げられた、皮のカリカリ感がいい。豚挽肉とキャベツのバランスも上々。
ニンニクはそれほど入っていないが、ニラがいい仕事をしていて、それなりにパンチもある。何より、ビールには最高に合う餃子だ。
餃子とビールは、ともに五百円なので、合わせてぴったり千円。僕は、千円札1枚を払って、気持ちよく店を出た。
そして…。(以下、続くw)