前回の訪問は、2016年だった。
僕は、自宅から47km超も走って、この店に辿り着き、史上最高最強の餃ビーを堪能したのだ。
僕は、この店「龍門」の焼餃子を、東京ベスト級だと思っている。
その理由については、以前のエントリーで何度もご紹介させていただいている。
皮と具が、芸術的とも言えるバランスで両立している。皮は非常に薄皮で、裏は軽く包んであるだけなので、噛みしめたとたん、包みこまれた野菜の旨味が溢れ出してくる。
カリカリ、ふわふわ、そしてザクザク。
三位一体の感覚が、口の中で混じり合って、想像を絶するハーモニーを醸し出す。
いやはや旨い。旨すぎる。これは、この店でしか味わえない唯一無二の味だ。
とにかくもう、超絶的に美味しく、しかも、ビールには最高に合う。
だから僕は、先週、そんな「龍門」を久しぶりに訪れることができ、実にワクワクしていた。
店舗には、土曜日の午前11時少し前に到着。
この店は、日曜営業しておらず、平日は、ランチタイムと夕方17時からの営業。
夕方は、餃子があっという間に売り切れになってしまうため、終業後ダッシュで向かっても、東京からでは間に合わない。
ということで、僕が行くとすれば、土曜の昼間しかなく、これまでも、ずっとそのパターンで訪れていた。
開店後は、行列になっているのが常だったので、今回も一番乗りできて、ホッとした。
これならば、最高の席で最高の餃ビーが味わえる筈。そう信じていた。
店の中では、オヤジさんが、開店準備をしている姿が見えた。大丈夫。臨時休業でもない。僕は、興奮を抑えきれず待っていると…。
いきなりドアが開いて、そのオヤジさんが出てきた。そして僕にこう告げる。
「もしかして、ウチが開くの待ってるの?」
僕は、「はい、そうです。」と告げる。そして、もしかすると早めに入店させてくれるのかも…?と期待した。
しかし、オヤジさんの発言は、そんな期待と真逆のものだった。
「うち、11時半を過ぎないと、店をあけないから」
僕はちょっと驚いた。
以前は11時開店だった筈なのだけれど、開店時間が遅くなったのか…。
でも、折角ここまで遠征してきたのだから、あと30分待つぐらい、どうってことない。
ということで、「大丈夫です。待ちますので。」と告げると、オヤジさんはこう言った。
「いや。そこ歩道だし、人が通るから…。」
にべもない。
「邪魔だから、そこで待っているな」と言わんばかりの口調だった。
いつも行列になっている店なのに…。僕一人が立っていても邪魔にはならないだろうに…。しかも、そんな言い方ってないんじゃないか。
僕は一瞬不愉快になったが、まぁ、このオヤジさんが無愛想なのは、今に始まったことじゃないから、なんとか我慢。
「わかりました。また来ます。」と言って、いったん店を離れた。
大鳥居の駅前まで行って時間をつぶし、11時半より少し前に戻ると、店は完全に開いており…。
先客も入っていた。
僕の後にも続々入店し、あっという間に満席になってしまったから、あと数分遅れていたら、入れなかったところだ。
僕は何だか理不尽な思いを抱いたが、気を取り直した。
まぁ、いい。これから絶品餃ビーが堪能できるのだから、文句は言うまい。
何より、店の奥で餃子を包んでいるおばあちゃんをみていたら、とても嬉しくなった。
4年前の訪問時は、おばあちゃんが不在で、オヤジさん一人の営業となっていたからだ。
おばあちゃんは、もう90歳は超えているという話なのに、元気で本当によかった。
そして、久しぶりに、そのおばあちゃんの餃子を味わえると思うと、興奮が止まらなかった。
メニューは各種あるが、この店で食べるべき料理は、餃子一択。
そもそも僕は、この店で、餃子以外の料理が注文されているのを見たことがない。
野菜炒めやタンメンなどは、本当に存在しているのか?と思ってしまうほどだw
餃子は、6個入り1人前だが、大盛というものがあり、これだと9個に増量される。
この日も、僕はもちろん、大盛を注文。
その相棒となる《キリンビール》は、餃子が出てくるタイミングに合わせて注文するつもりだった。
僕は、4年ぶりの訪問に興奮しながら、少し綺麗になった店内を眺めつつ、待っていると…。
焼餃子がやってきた!
いつもと変わらぬ、超絶の焼き色、感動のビジュアル…と言いたいところだったのだけれど、僕は、一瞬目を疑った。
2列目の焼き色が薄すぎる(ノД`)
龍門餃子の大きな特徴は、カリッカリに焼けた皮と、ほろほろの具が醸し出す、絶妙のバランス。
それなのに、こんな薄焼きでは、その魅力も半減だ。
折角4年ぶりに訪れたというのに、まさか、こんな餃子が出てくるとは…。
僕は、あまりのショックに大きく落ち込んだが、何とか気を取り直した。
薄焼きの方は、この店の《ベスト餃子》と言えないが、それでも、普通の店より断然美味しいことは間違いないからだ。
モヤモヤした気分は、最強のお供であるビールに補ってもらおう。
そう思って、僕は、オヤジさんに「ビールをください」と注文した。
それに対して、オヤジさんが僕に言った言葉は、僕にとって、この日一番の衝撃だった。
「悪いけど、今、昼間はビールやってないんだよ。」
え、え、え?
僕は一瞬耳を疑ってしまった。
どうやら、《コロナ対策で、椅子を減らしているため》ということらしいが、僕には、その理由が理解できなかった。
椅子を減らしているからビールはダメ、というのが理由なら、昼に限らず夜だってダメな筈だ。
なぜ昼間だけ…?
僕はどうにも釈然とせず、「だったら、メニュー欄にも、ビール(夜のみ)とか書いておいて欲しい」と思った。
僕は、喉の先まで待ち構えていたビールを味わうことができず、大いに落胆した。
餃子は、もちろん今回も絶品。《薄焼き》の方は、若干味わいが劣ったけれど、それでもやっぱり、唯一無二の美味しさだった。
ただ…。
僕はそれを餃ビーで味わうことができなかったショックで、意気消沈。
いつもは餃子を追加注文するのだけれど、そんな気分も出ずに、落ち込んで店を出た。
店の外は、いつものように大行列となっていた。
これだけ並んでいても、歩道は普通に使えるのに、僕は、開店前、ひとりでも邪魔扱いされたんだよなぁ…。
そんな恨み節まで言いたくなった。
「龍門」の焼餃子は、未だ東京ベスト級であるという思いは変わらない。
しかしこの日は、理不尽な洗礼と大きな失望があったため、今後の再訪については、ためらいも生じてきた。
ちょっと残念な気分だ。