喉が、いや、僕の身体じゅうがビールを求めていた。
その日僕は、大好きな「龍門」で、4年ぶりに絶品焼餃子を食べたのだけれど…。
ランチタイムは、ビールの注文が「不可」だと言われてしまったからである。
僕は、一瞬、目の前が真っ暗になったようなショックを味わった。
史上最強の餃ビーを味わうために、わざわざ大鳥居まで遠征したというのに…。
落ち込まずにいられるわけがない。
餃ビーできないことがわかった時点で、餃子ライスに切り替える、という手もあった。
それはそれで満足できた筈だ。
しかし、僕はその選択をしなかった。餃ビーの借りは、餃ビーで返す。
そう思い、絶品餃子の大盛り(9個)を食べただけで、「龍門」を出た。
本当ならば、ビールとともに、《お替わり》をしようかとも思っていたので、お腹に余力を残した形だ。
ただ、龍門の餃子は、揚げ焼きのような焼き方で、それなりにボリュームもあるため、9個も食べた僕は、それなりの満腹感があった。
だから僕は、腹ごなしもかねて、隣駅の糀谷まで歩くことにした。
僕が最初に餃ビーリベンジをしようと思っていた店は、ここ。
「味一番」だった。
いかにも、《ザ・町中華》といった感じの、寂れた趣が素晴らしい。最近、僕は、町中華にハマっているので、尚更そう感じた。
なんとなく、店全体が傾いている、というのも魅力だ。
ということで、入店。
いざ、リベンジ餃ビーだ!と思い、餃子とビールを注文しようと、壁に貼ってあったメニューを眺める。
すると、こんな表示が目に留まった。
餃子(夜のみ)450円
なんと…。
僕は、再び大きなショックを受けた。
不幸中の幸いは、まだ、ビールを注文していなかったこと。
折角ビールを頼んでも、餃子が食べられなければ全く意味がないので、僕は途方に暮れるところだったからだ。
僕は、店員さんに「すみません」とお断りをして、店を出た。変な客だと思われたかもしれないが、仕方ない。
ということで、僕が次に向かった店は、ここだった。
「朋友」である。
「味一番」ほどではないが、こちらも歴史を感じさせる佇まいになっている。
さぁ、この店で、今度こそ餃ビーリベンジだ!
…と思いながら、店に近づいていくと…。なにやら、入口に貼り紙が貼ってあるのを発見。
ごはん終了しまた。
ん?
「し」がひとつ足りないんじゃないか?と思うのだけれど、まぁ、言いたいことはわかる。
営業中の札はついたままなので、要は、《ご飯類》が提供できなくなった、ということなのだろう。
ならば、僕的には問題ない。餃ビーにご飯は不要だからだ。
ということで、入店。
ドアを開くなり、おかみさんに謝られる。
「すみません、今日はご飯が終わってしまったんですけど…。」
しかし、僕はひるまず、「餃子はありますか?」と聞いた。
すると、「はい。あります。」とのこと。
ならば全く問題なかったので、僕は、ビールとともに注文し、カウンターに着席した。
ほどなくすると…。
ビールがやってきた!
僕にとっては、まさに、待ちに待ったビールだったので、ようやくありつけてホッとした。
アテが一緒についてきたのも嬉しい。
たった胡瓜4切れだけれど、無料のサービスだし、餃子が出てくるまでの繋ぎと考えれば十分だ。
僕は、しばらくの間、喉をビールで潤しながら、主役の登場を待った。
そしてついに…。
焼餃子、登場!
ついに、ようやく、念願の餃ビーが叶った。
ここに辿り着くまでに、紆余曲折があっただけに、僕は、嬉しくてたまらなかった。
その味は、実にオーソドックスなものだった。
何しろ、「龍門」の餃子を食べてしまった直後だけに、それと比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまうが、手造り感溢れる餃子だ。
その具は、野菜と肉がバランス良く、ニンニクは入っていない。あまり下味はついておらず、普通に酢醤油が合う。
カリッカリに焼けた皮が味わい深く、ビールとの相性は抜群だった。
待望の餃ビーを堪能し、僕は、十分にお腹が膨れてきたのだけれど、そんな僕の眼前に、サプライズが出現した。