この店を訪れるのは、5年半ぶりだった。
店の名は、「炒め処 寅藏」。
僕のハンドルネームは《壱蔵》なので、その名前だけで親近感を感じる。
正確に言うと、《くら》の漢字が異なるのだけれど、「藏」は「蔵」の旧字体だから、同義と考えて良いだろう。
以前この店を訪れた時の記録は、日記アプリのDay Oneに残っていた。
この日記を書いた日、僕は、お昼頃に訪れたのだけれど、ランチタイムに提供されるメニューは、「担々麺と冷やし担々麺しかない!」という強気の設定。
しかし、食べて納得の美味しさで、感動したことを思い出す。
僕にこの店を勧めてくれた友人は、「夜はさまざまな料理があって、どれも素晴らしい。夜なら餃子もありますよ。」と言っていたので、いつか夜に行こうと思っていたが、機会を逃していた。
先日、久しぶりに駒込を訪問。
駅前の「珍々亭」で餃ビーした後、僕は、とある店をハシゴする予定だったのだけれど、なんとその店が臨時休業。
いったいどうしようかと途方に暮れて、駒込の街をぶらぶらと歩いていると、この店(寅藏)の前にたどり着いた。
僕は、「あぁ、あの時の担々麺は美味しかったなぁ。でも、今日は餃子が食べたいし…。」などと思いながら、店の前まで行くと、僕の目に衝撃が飛び込んできた。
おぉ!なんと、餃子がある!
ランチメニューが「担々麺と冷やし担々麺」だけという設定は、5年半前と何ら変わっていなかったが、それに餃子が加わっていたとは。
わざわざ「本日餃子有ります」という紙を挟み込んでいるということは、日によって、提供できる日とできない日があるということだろう。
いやぁ、その特別感が素晴らしいではないか。
僕は、その瞬間に出会えた興奮で、胸が熱くなった。
この日、僕が駒込を訪れたのは、偶然じゃない。きっとこれは運命だ。Destinyだ。
安いサンダルを履いてこなくて良かったw
何を言っているのかよくわからなくなってきたが、とにかく入店。
店内は、あの時のまま。
カウンター6席、テーブル6席だけのこじんまりとした店舗だが、感染症対策もしっかり行われており、小綺麗な造りだ。
もちろん、僕は焼餃子を注文。
折角だから担々麺も頼もうかと思ったが、ビールも提供可能ということだったので、餃ビーしてから考えることにした。
待つこと10分程度だろうか。
焼餃子がやってきた!
カリカリの焼き色が美しい。丁寧に作られた餃子だということが、ひと目でわかる。
もしも緊急事態宣言が解除になっていなかったら…。
もしも駒込に来ていなかったら…。
もしも2軒目に行く筈だった店が臨時休業していなかったら…。
僕は、この組み合わせに出会えなかった。
人生、たまにはいいことがある。
そんなことを思いながら、僕は再び、至福の餃ビータイムを堪能した。
餃子は、カリカリの薄皮の中に、肉がびっしりと詰め込まれていて、食べ応えがある。
下味はそれほどついていないので、普通に酢醤油が合う。
噛みしめるたびに、口内に、肉の旨みがじんわりと溢れてくる。これは、肉を味わうための餃子なのだ。
1軒目の「珍々亭」餃子は、野菜&ニンニクがっつりの餃子だったので、それとは真逆タイプの餃子だけれど、これもまた、美味しい餃子だ。
僕は、餃子が持つ奥行きの深さに感動しながら、ビールとともにそれを堪能した。
ふと気がつくと、店はほぼ満員になっており、皆、餃子と担々麺(あるいは冷やし担々麺)を注文していた。
ただ僕は、この日2軒目だったし、ビールと餃子ですっかり満足してしまったため、麺は、次の機会にとっておくことにした。
今度は、以前食べていない、冷やし担々麺と餃子(あれば)のコラボもいいかもしれない。
寒い時期でも《冷やし》があるのかどうかは、よくわからないけれど。