昨年、ミステリ界隈を騒然とさせた超異色作。
ちょっと出遅れてしまったけれど、僕は、今更読んでみて…。
そして、大いに驚いた。
その《事実》が明らかになった時、僕は、「まさか…」と思いながら、冒頭から読み返した。
そして、実際にそれが、ごく自然に、しかし完璧になされていたことを理解し、唖然呆然。
このアイデアを思いつき、そして実践した作者の凄さはもちろんのこと、この文庫本製作に関わった方は、相当苦労したろうなぁ…と思わずにいられない。
巻末の「作者あとがき」まで巻き込んで、《紙の本》史上最高のアクロバット技巧が炸裂している。
本の帯には、《電子書籍化絶対不可能!?》と書いてあるが、?マークは不要だと思う。
個人的には、
電子書籍化絶対不可能!!!!!!
と、力強く断言したい。
今後どんなに電子書籍の技術が進化しようとも、いや、進化すればするほど、むしろ、このトリックとはかけ離れていく。
それぐらい、この小説は、《紙の本》であることが必然となっている。
一般的な、「単行本発売→文庫本化」という流れではなく、いきなり文庫本で発売されているのも重要なポイント。
単行本を単純に文庫化する流れでは、この本は成立しなくなるからだ。
物語本編のストーリーは極めてシンプル。
とある大御所ミステリ作家が、癌の闘病を経て、61歳で死去。
その隠し子として生まれた《僕》が、奇妙ないきさつから、父の遺稿である『世界でいちばん透きとおった物語』を探し出すことになったのだが…。
という話。
新潮社の《ライトノベル》系ブランドである「新潮文庫nex」で発売されているだけあって、実に「軽い」小説で、あっという間に読める。
ただ、はっきり言って、物語本編のストーリーはどうでも良いのだ。(おぃ!)
この本では、最後に待ち受ける《紙の本》ならではの、超絶技巧を堪能していただきたい。*1
どんでん返し好き、紙の本好き、のミステリファンならば、きっと楽しめる筈。
超オススメ。
*1:その超絶技巧を理解するためには、本編の内容も関わってくるので、全く無意味というわけではないのだけれど…。