餃子ランナーは電子機器の夢を見るか?

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村上春樹「街とその不確かな壁」発売!…の8年前に「村上さんのところ コンプリート版」で語られていたこと。

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4月13日。「街とその不確かな壁」が、遂に発売となった。

ハルキスト(村上主義者)*1歓喜、6年ぶりの新作長編だ。

村上春樹先生は、国民的ベストセラー小説家であるのはもちろん、稀代のエッセイストであり、そしてランナーでもある。

僕は、エッセイストやランナーとしての村上春樹先生を信奉しているのだけれど、小説は、それほど読んでいない。

実に率直でわかりやすいエッセイの筆致に比べ、その小説世界は、僕にとって難解であり、今ひとつのめり込めずにいるのだ。

だから僕は、村上主義者になれないのだけれど、でも、やっぱり新作長編の発売は嬉しい。

今回の最新長編は、村上春樹作品としては初めて、「紙版」と「電子版」が同時刊行されたことでも話題となっている。

いよいよ、小説業界も電子化の流れが加速してきたかと感じる人もいるだろう。

しかし僕は、まだまだそんな時期にはなってないと思う。

「電子版」と「紙版」が同価格だからだ。

流通コストゼロの「電子版」が「紙版」と同価格というのは、どう考えても間尺に合わない。

電子書籍は、紙の本と違って定価販売の縛りがないため、ある程度時期がくれば、緩やかに値段が下がっていく。

実際、村上春樹先生の旧作も、総じて紙の本より電子書籍版の方が安くなってはいるが、それほど割引率は高くない。

まだまだ電子書籍市場は未熟なんだなぁ…と思わずにいられない。

ただ、例外もある。

村上春樹先生の著作の中で、圧倒的に電子版がお得なものが存在するのだ。

その著作とは、村上春樹先生が、読者たちからの質問に対して、丁寧に(しかもユーモアたっぷりに)答えていく本。

これだ。

「村上さんのところ」として、新潮文庫で発売されている本の《コンプリート版》でありながら、圧倒的にお得になっている。

電子版は、文庫版の8倍!というコンテンツ量を有しながら、その価格は、文庫版の2倍程度。(文庫版990円/電子版2,200円)

しかもなぜか、Kindle版だけさらにメチャメチャお得で、文庫版より安い!という逆転現象が生じているのだ。

その凄さについては、3年前に詳しく紹介させていただいた。

この時僕は、何かの間違い(Kindle版のみ定価設定ミス?)じゃないかと思ったのだけれど、3年経っても、他社の電子書籍版は2,200円なのに、Kindle版だけが900円台。

amazonと村上春樹先生の間に、特別契約でも結ばれているのだろうか?

いやぁ、もう、お得すぎてたまらない。

電子版「村上さんのところ」には、文庫版には存在しないコンテンツが多数掲載されているが、その中にこんなものもあった。

1980年に、文芸誌で発表された中編「街と、その不確かな壁」に関する、ファンとの質疑応答だ。

春樹先生は、「その作品は、《世界の終わりとハーボイルド・ワンダーランド》に吸収合併され、今のところ本にする予定はない」と答えている。

しかし今回、《世界の終わりとハーボイルド・ワンダーランド》とは別の形で、新作長編になったことは非常に興味深い。

村上春樹先生の中で、心境が変わってきたということだろうか。

中編「街と、その不確かな壁」に関しては、電子版「村上さんのところ」限定で、もうひとつ、ファンとの興味深い質疑応答も掲載されている。

村上主義者ならば、当然チェック済の話かもしれないけれど、僕は初めて知ったので、非常に興味深く読んだ。

電子版「村上さんのところ」は、村上春樹ライブラリの研究本としても非常に有意義なのだなぁと実感。

新作「街とその不確かな壁」に共鳴したファンの方は、是非ともゲットして、その素晴らしさを味わって欲しい。

*1:村上春樹先生は、自身の熱狂的ファンについて、「ハルキスト」とネーミングを気に入っておらず、「村上主義者と名乗って欲しい」と常々仰っている。


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