昨日は、「第1回達人戦立川立飛杯」が開催された。
これは、今年から新たに設営された《50歳以上の棋士だけによる》公式棋戦。
いわば《シニア大会》と言えるものとなる。
これまで将棋界には、若手限定の大会(新人王戦)はあったが、シニア限定の大会は初。
藤井七冠は当然不在(藤井七冠が出場資格を得られるのは、29年後w)だから、ともすると、盛り上がりに欠けるのではないかという懸念もあった。
しかし、それは単なる僕の杞憂だった。
この棋戦終了後は、将棋クラスタの人たちが騒然となっただけでなく、X(旧Twitter)のトレンドにもなっていたし、Yahoo!ニュースにも登場するほど、大きな話題となったのだ。
それはなぜか。
現在、日本将棋連盟の「会長」である羽生善治「永世七冠」が、自分で自分を表彰するという《セルフ表彰式》が行われたからである。
表彰式において、羽生先生は、プレゼンテーターである会長として登壇。
達人戦に対する感慨を述べた後、退場した。
しかしすぐに、この棋戦のスポンサー立飛グループのイメージキャラクター「たっぴくん」「たっぴちゃん」とともに、照れながら再登壇。
今度は、優勝者として姿を見せたのである。
その後、自ら賞状を読み上げ、それを渡して受け取る1人2役を演じた。
真面目な表彰式の筈なのに、完全にコントだ。
会場は大爆笑していたし、僕も、映像を見ていて思わず吹き出してしまった。
しかしこれは、決して予期せぬハプニングというわけではない。
羽生先生が、将棋連盟会長職として、初開催となるこの大会を盛り上げるための「最大効果」を演出したのだろうと確信している。
この大会には、前会長である佐藤康光九段も出場していたから、今回に限って、プレゼンテイターを代行してもらうこともできた筈。
しかしそれを行っていたら、ここまで話題にはならなかったろう。
羽生善治「会長」が、羽生善治「九段」「永世七冠」を、自ら表彰するというインパクトは絶大。
そんな羽生先生の深謀遠慮は見事に成就し、昨日は、大いに盛り上がったということになる。
もちろん、自身が優勝できなければ、これは「絵に描いた餅」となっていた筈で、稀代の実力者だからこそのパフォーマンスと言える。
シニア限定の大会とはいえ、ここできっちり優勝するのが、羽生先生がスーパースターたる所以だ。
できれば、こういったシーンを、今後、他の棋戦でも見たい。
七大タイトルのどれかを獲得し、タイトル通算100期獲得の舞台で見たい。
藤井七冠の壁は果てしなく高いけれど、羽生先生だって、未だ現役のスーパースターなのである。
将棋ファンとしては、再びの頂上対決を夢見るばかりだ。