叡王戦5番勝負の激闘を制し、ついに、藤井「史上最年少」三冠が誕生した。
驚くなかれ、まだ19歳1ヶ月。
これまで羽生九段が持っていた「22歳3ヶ月での三冠達成」という偉業を、なんと、3年以上も縮める大記録の達成だ。
記者会見に臨んだ時の表情は、もはや、風格さえ感じさせた。
どんなに若くても、既に、将棋界ではトップクラスの存在なのだから、風格があるのは、至極当然とも言える。
しかし、いざ質問が始まってみると…。
いつものように、柔和な表情と口調で、謙虚な回答に終始した。
質問の中には、「そんな質問するなよ!」というような、答えにくいものも混じっていたが、ひとつひとつ、言葉を選びながら、丁寧な回答をしている。
このように、記者会見の場では、とりわけ温和で謙虚な藤井三冠なのだけれど、いざ、将棋盤の前では全く別人。
序盤の構想力、中盤の駆け引き、終盤の切れ味。どれをとっても隙がなく、対戦相手を圧倒している。
去年ぐらいまでは、中盤で時間を使いすぎ、終盤に時間がなくなり、悪手を指してしまうことが、ごく稀にあったが、最近は、時間の使い方も格段に上手くなった。
こうなると、もう、死角がなくなったと言っていい。
豊島竜王に対しては、先日の王位戦を4勝1敗で退け、今回の叡王戦も3勝2敗。
王位戦の開幕までは、豊島竜王相手に1勝6敗と苦手にしていたのに、もはや、そんな影はどこにもない状況だ。
藤井三冠の凄いところは、連敗がないことで、まれに負けることがあっても、その敗戦を引きずったりしない。
今回の叡王戦(第5戦)でも、第4戦の完敗を踏まえて、しっかりと立て直してきた。
同じ相手と複数回戦うこととなる、タイトル戦の番勝負では、これまで全て勝ち越しているし、今後も負け越すイメージが浮かばない。
現名人の渡辺明三冠も、今年の棋聖戦ではストレート負け(0勝3敗)してしまうほどの強さなのだから、もはや「敵無し」状態と言っていい。
10月からは、竜王戦7番勝負も始まる。
またしても、豊島(現)竜王との対決だ。
藤井三冠は、持ち時間が長ければ長いほど強さを発揮するため、2日制8時間の竜王タイトル戦は、文句なしの条件。
となると、棋界最高位のひとつである竜王位を奪取しても、全く不思議はない。
そして…その先。
今や、将棋界の全棋士が藤井三冠を研究し、作戦をぶつけてくるから、藤井三冠にとっては、厳しい戦いが続く。
だから、タイトル戦の挑戦者にたどり着くまでに、取りこぼす可能性もゼロではない。
しかし、それをくぐり抜けて、タイトル戦の場に出られれば、奪取は確実だと思う。
それぐらい、今の藤井三冠の実力は図抜けている。
名人位だけは、システム上、どんなに早くても再来年しか挑戦できないが、それ以外の棋戦は、来年でも奪取が可能。
来年の末には、藤井七冠になっている可能性もあるのではなかろうか。
そして…。
再来年には、史上初の八冠達成も決して夢ではないと、僕は思っている。