東京の禁酒令が、一時的に解除されていた期間。
僕は、会社帰りに、この店を再び訪れた。
東武伊勢崎線の曳舟駅から徒歩5分。
東向島にある「味の横綱」だ。
冷やし中華の定番である、キュウリ、ハム、錦糸卵などが見つからず、目玉焼きに伊達巻きが、大きく存在を主張。
チャーシューやなると、わかめ、もやしなどなど、とにかく具がたっぷり盛り込まれており、麺の姿が確認できないほど。
いやぁ、これはかなり独創的な冷やし中華だぞ。
この店で食べた「五目冷やし中華」が、とても素晴らしかったので、今度は、他の料理も味わってみたいと思ったのである。
正確に言うと、この冷やし中華を食べた日に、続けて注文するつもりだった。
しかし、冷やし中華のボリュームが凄くて、お腹いっぱいになってしまったため、リベンジ訪問ということになる。
《他の料理》などと書いたが、手始めに注文する料理は決まっていた。
もちろん餃子だ。
その前にまず…。
瓶ビールで喉を潤す。
休日のビールもいいが、仕事帰りの一杯は本当にたまらない。
この日は金曜日だったので、1週間の疲れがたまっていたこともあり、尚更格別だった。
サービスの漬物をアテに、週末の幸せを堪能していると、ほどなく…。
焼餃子がやってきた!
いやぁ、なんとも美しい焼き色で、カリカリ感が伝わってくる。
紛れもない手作りのフォルム。これはもう、旨いに違いないぞ。
お約束(?)の鉄板コラボレーション。
これがあるから、僕は、1週間の疲れを癒やすことができる。
しかし…。
それもまたしばらくは、お預けになってしまう。どうにもこうにもやりきれない。
ひとり黙々と、餃子とビールを堪能して、そして店を出るだけ。
そこにいったい何の問題があるというのか。毎日の通勤電車の方が、よっぽど危険だ。
発令根拠不明の禁酒令が恨めしい。
ただ、この店を再訪した日は、まだ7月初旬だったから、僕は、そんな思いを抱かず、純粋に餃ビーを堪能することができた。
囓ってみると、口内にじゅわっと肉汁があふれ出した。
小さな筐体であるが、具はみっちりと詰まっていて、しっかり味もついている。
皮のカリカリもちもちバランスも文句なしで、まさに、味の横綱。
例えて言えば、餃子界の千代の富士といったところだ。
こういう餃子には、酢胡椒が合う。
僕は、その美味しさに酔いしれながら、もう1品、何を注文しようかと考えた。
メニューを眺めてみる。
水餃子や揚餃子で「追い餃子」するのも魅力的なプランだったが、この日は、チャーハンを食べることにした。
先日、大森で絶品玉子チャーハンを食べて以来、僕は、チャーハンに惹かれているのだ。
この店には、チャーハンが11種類も用意されていたので、少しだけ迷ったが、他店では見かけたことのない「ニラカレーチャーハン」が目に留まったので、それに決定。
この店は、カウンター席しかないので、僕は、それが厨房で作られていく様子を眺めながら、眼前に出てくる瞬間を待っていた。
そして…。
ニラカレーチャーハン登場!
僕は、ニラが大好きなので、溢れんばかりのニラ量に感激。
カレー味はそれほど強くなかったが、ニラや玉子とうまく絡み合っている。
ご飯のパラパラ感も心地よく、いくらでも食べられそうなチャーハンだ。
こうなると、他のチャーハンも食べてみたくなった。
先日食べた五目冷やし中華は、かなり異色なものだったから、五目チャーハンも気になる。
他にもいろいろと食べたい料理があるので、禁酒令が明けたら、是非、また訪れようと思う。