東京都民なら誰でも、【水道橋】という名前を聞いたことがあるだろう。
「あの辺りの地名ね」と、場所までイメージできる人もいるだろう。
しかし実際は、水道橋という地名はない。*1
【水道橋】は、神田川にかかる道路橋の名前に過ぎないのだ。
そんな水道橋を挟んで、その住所は、文京区側と千代田区側に分かれる。
JR水道橋の駅を降り、橋を越えて東京ドーム側に向かうと、そこは文京区後楽。ドームと反対側、中華料理店の密集地帯は、千代田区神田三崎町になるのである。
そんな密集地帯から、この日に僕が選んだ店は、「上海飯店」だった。
店に入ってみると、先客はゼロ。
整然とした赤のテーブルと椅子。
いかにも、本格的な中国料理の店、といった趣だ。
それはいいのだけれど、この日は金曜日で、しかも18時半ぐらいだったのに、誰も客がいなくて大丈夫なのか?と、僕は一瞬不安になった。
しかし、僕が食事をしている間に何組か入ってきたので、この店のピークタイムは、もっと遅い時間だということなのかもしれない。
壁のメニューを眺めてみる。
「ニラ玉」1,200円!というのは、かなりアグレッシブな値段設定だと思ったが、カニ玉(小)が1,000円なので、おそらく、かなりボリュームのあるものが出てくるのだろう。
僕はニラ玉が大好きなのだけれど、流石に、この値段のニラ玉をひとりで食べるのは躊躇する。とりあえず見送り。
「社長豆腐」という謎のメニューや、これは旨いというキャッチピーがついている、「ネギトリ(小)」が気になった。
テーブル上のメニューには、もっと多くの料理が掲載されていた。
一品料理は、総じてなかなかの価格設定。小盛りでも1,000円を超える料理が多い。
《三目盛り合わせ》などもあるので、いわゆる町中華とは一線を画している。
ただ、こういったおつまみメニューも用意されているのがありがたい。
ネギトリは、ここでも、これは旨いと、強力にプッシュされていた。
そこまで言われるなら注文してみよう。
ネギトリは「おつまみ」なのであるから、ビールも合わせて頼んだのは言うまでもない。
数分経つと、ネギトリがやってきた。
(小)サイズで780円は少し高いか…と思ったのだけれど、なかなかのボリュームがあったので、一安心。
いやぁ、いかにもビールに合いそうな料理ではないか。
禁酒令が解除になって、本当に良かった。(最近こればっかり言ってるなw)
たっぷりネギの下には、沢山のトリが埋まっていた。
柔らかく茹で上げられたトリと、温かいネギのバランスがいい。甘辛の味付けで、ビールが進む進む。
流石は、「これは旨い」とプッシュされるだけの料理だなぁと思った。
ネギトリで勢いがついた僕は、メイン料理に進むことにした。
僕にとってのメイン料理と言えば、もちろん…。
餃子だ。
壁のメニューでは、「味自慢」と書かれており、これも、この店のお薦め料理であることがわかる。
価格も430円だから、それほど高くない。
僕は期待に胸を膨らませて注文。
厨房から、餃子が焼き上がる音が聞こえ、ワクワクしながら待っていると、ついにそれはやってきた。
おぉぉ、実に見事な焼き色ではないか。
サイズはそれほど大きくないが、ぷっくりとした筐体で、十分に具が詰まっていることが一目でわかる。
お約束のツーショット。史上最強のベストカップル。
赤いテーブルの上に並んだ姿は、さながら、結婚式場の赤絨毯に立つ新郎新婦のようだ。
いやぁ、このヒダが美しいのなんの。
間違いなく、手包み餃子であることを示しており、それだけで僕は惚れ込んでしまう。
これは絶対に美味しいに違いないと思いながら、囓ってみると…。
旨いっ!
と思わず叫んでしまうような美味しさだった。
流石、「味自慢」の看板はダテじゃない。
肉感にとんだ餃子で、一口囓ると、口内に肉汁がじゅわっと溢れ出す。
皮のもちもち感とカリカリ感、ジューシーな具が三位一体となる芸術。
町中華店は、ニンニクがっつりの野菜系餃子が多いのだけれど、これは、その対極に位置する感じの本格肉餃子だ。
具にはしっかりと味がついているので、何もつけなくても十分に美味しいが…。
つけるとすれば、肉の味を殺さない酢胡椒が合う。
僕は、かなりこの餃子を気に入ってしまったので、1皿目を食べている途中で、おかわりを注文。
ネギトリと餃子で、ビールも進みまくったので、こちらも追加注文。
1皿目の餃子が残り2個の状態になったところで、2皿目の餃子がやってきたため、それをまとめて大盛り状態にしてみた。
2本目のビールとともに、僕は思う存分餃子を堪能した。
ネギトリ、餃子、どちらも最高。
店の雰囲気もいいし、思ったほど高くなかったので、この店は、是非また訪れようと思う。
謎メニューである社長豆腐や、1,200円のニラ玉も気になるので、今度は何人かで訪れて、それを堪能してみたい。
*1:水道町や水道という地名はあるのだけれど、それは、水道橋駅から少し離れている。