時は、今から1週間前に遡って、8月11日の話。
祝日。山の日。午前7時。
僕は、「足柄峠走」の拠点となる、山北町健康保健福祉センターにいた。
センターはまだ開館時間外だったが、外には24時間利用できる貸ロッカーがある。
事前の天気予報によれば…。
この日のこの時間、山北周辺の天気と気温は、「曇り。21℃」だった。
だから僕は、始発に乗り、1時間半もかけて遠征してきた。
折角「山の日」だから、山で気持ちよく走ろう!と思ったのだ。
しかし、いざ山北に到着し、貸しロッカーに荷物を預けようとした時、僕はちょっと後悔していた。
まだ早朝だと言うのに、焼けつくような日差しが照りつけてきたからだ。
いやはや暑い。暑すぎる。
これのどこが「曇り。21℃」なのか。話が違う。
いったい誰なんだ。適当な天気予報を出した輩は。責任者を呼べ、責任者を。
と、叫んでみても後の祭り。
もう、ここまで来てしまったら、スタートするしかない。
僕は覚悟を決めて走り始めたのだけれど…。
いやはや暑い。本当に暑い。つらい。苦しい。
2km地点にある(コース上唯一のコンビニ)ファミマで、ミネラルウォーターを購入して頭からかぶり、凍結ボトルを持参して走る。
カチカチに冷えたボトルが、あっという間に溶けていく。
その後、コース途中で最後の自販機となる5.5km地点で、さらにミネラルウォータを買ってかぶりまくったが、それでも汗はどんどん出てくる。
それもその筈。
山の中腹、7km地点にある「はこね金太郎ライン」との分岐点における気温は、なんと…。
30℃!
になっていたからだ。
2ヶ月前の峠走では26℃(晴れ)、先月の峠走では27℃(曇り)で、それでも十分苦しかったのに、今回は、それを大きく上回る30℃(晴れ)という最悪の状況。
気温とともに掲示されている「走行注意」という文字は、僕に対する警告のようにも思えた。
この時点で、まだ午前8時台だったのに、もう、真夏日。
日差しを遮るものはまるでないし、アスファルト上でもあるので、体感気温は35℃ぐらいあったのではないか。
しかも、ここからは傾斜も厳しくなっていくので、地獄だ。
今から考えると、せめてここで引き返すのが正解だったのだろう。
しかし、貧乏性の僕はそれが決断できなかった。
「折角時間とお金をかけてここまで来たのに、途中で引き返したらもったいない」と思ってしまったのだ。
何がもったいないものか。
この先で倒れたら、取り返しがつかないところだったんだぞ。
…と、今なら言えるが、この時の僕は、そういう思考ができなかった。
僕は、クラクラになりそうな頭で、すでに走る気力もなく、ひたすら上へと歩いていた。
最後は、気力と意地で、何とか頂上の足柄万葉公園に到着。
この時点でも、強烈な日差しは照りつけていたが…。
残念ながら、富士山のある筈の場所は、すっかり雲に覆われていた。
折角ここまで登ってきたのになぁ。
しかし、悔やんでいても始まらない。
時間が経てば経つほど、身体から水分が失われていく。危険だ。
僕は、下りの傾斜の力を借りて、なんとか坂を駆け下っていった。
途中の自販機ではまた、冷水を補給して身体にかぶりまくり、なんとか…。
フィニッシュ!
いやぁ、キツかった。つらかった。
キロ当たり6分34秒のタイムは、ここ3ヶ月の峠走で最悪。
登りの7km地点以降は、ほぼベタ歩きの状態にもなっていたので、正直、練習になったのかどうかも怪しい。
ただ…。
こんな灼熱の日でも、峠走をやりぬくことができたことだけは収穫。
今年の北海道マラソンは、どんなに暑くなってもきっと完走できる自信はついた。
タイムはともかくとして…。