昨日の昼休み。
オンライン書店のひとつ、「e-hon」をつらつらと眺めていたら、こんな表示が目に飛び込んで来て驚いた。
僕の人生にとって、最も大切な本。筒井康隆先生の「虚人たち」がフォーカスされていたからである。
TVで紹介された本ということだったが、いったいどういう形で紹介されたのだろうと思い、表紙画像にマウスを当ててみると、ロールオーバーした。
なんと、カズレーザーが紹介したとのこと。
カズレーザーは、お笑いコンビであるメイプル超合金のひとりだが、今は、芸人としてよりも、頭の良さで有名。
クイズ番組常連で、芸能界の才人が集う「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」で何回も優勝しているほど、図抜けた存在だ。
そんなカズレーザーが、この本をいったいどんな風に紹介したのだろう…?と、僕は大いに気になった。
こういった「旬」な話題について調べる時、一番役に立つのはTwitter。
ということで、Twitter検索をかけてみると…。
#山﨑賢人#カズレーザー#安藤なつ#羽田啓介
— よしこ (@yoshikokirisho) 2017年10月31日
年間150冊の本を読む読書家
おすすめは#筒井康隆『虚人たち』
1分間で1ページすすむ
空白のページが何ページもある pic.twitter.com/w98ai47O96
動画も含めて紹介されており、すぐにその内容がわかった。
カズレーザー曰く、「筒井康隆先生がすげー好き」で、人生で感銘を受けた一冊として、他ならぬ『虚人たち』を紹介していたのである。
旬の才人タレントであり、稀代の読書家でもあるカズレーザーが推奨したため、その反響は非常に大きく…。
カズレーザーさんが紹介した影響で、筒井康隆さんの『虚人たち』がアマゾン24時間以内に最も売り上げが伸びた本の1位に。 pic.twitter.com/3Awl3fiYWN
— flow2005 (@flow2005yob) 2017年11月1日
amazon24時間以内に、最も売り上げが伸びた本の1位にまで上り詰めてしまった。
僕は、子供の頃からのツツイストで、筒井先生の本は、全集を含め、ほぼ全て持っているが、その中で、あえてナンバーワンを上げるとすれば、この「虚人たち」。
だから、今回ふたたびこの本が脚光を浴びたことは、本当に嬉しかった。
虚人たち (中公文庫)
単行本の発売は1981年なので、今から36年前。
その頃からツツイストだった僕は、筒井先生の著作全てに惚れ込んでいたが、この本を初めて読んだ時の衝撃は忘れられない。
今のところ何でもない彼は何もしていない。何もしていないことをしているという言いまわしを除いて何もしていない。
から始まる冒頭部は衝撃的。
そう。この小説は、「彼」が小説に登場した時から、時間が流れ始めるのだ。
「彼」は、自分が小説の登場人物であることを意識し、また、彼の行動とともに、物語内の時間も進行する。1ページで1分間分の物語が、リアルタイムに進むので、彼が気を失ってしまうと…。
僕はその設定に酔いしれ、いつしか、冒頭から何ページも暗唱できるほど、読みまくったことを思い出す。
筒井先生メタフィクションの最高傑作だ。
以来、僕にとって「虚人たち」は、筒井先生のナンバーワン小説であり、今になっても不変。
カズレーザーのみならず、僕にとっても、人生で最も感銘を受けた一冊なのである。
昨年参加させていただいた、夢のようなイベントの記憶が甦る。
このイベントでは、「虚人たち」に関しての貴重な裏話を伺うこともできたので、とりわけ嬉しかったことを思い出す。
発売から36年経った今も、この本の凄さ、素晴らしさは、全く色褪せていない。僕は、もう数十度と再読しているが、未だに酔いしれまくるほど。
だから、カズレーザーの紹介で、今回初めてこの本を読む人は、幸せだなぁと思う。この本に出会えておめでとう!と伝えたい。
読点のない文体で書かれているため、最初は読みにくいと感じる人もいるかもしれないが、その文体も、この小説の凄さを形作る大きな技法。
何度も何度も読み返すことで、いや、読み返せば読み返すほど、その文体と構造の凄さを思い知る筈だ。
僕もまた、今朝から読み返しているのだけれど、またしてもぐいぐい引き込まれている。
36年前。単行本発売直後に受けた大きな衝撃が、またしても、僕の脳裏に襲ってくる。
本当に、本当に、この本は素晴らしい。
単行本には、筒井先生にサインもしていただいている。
僕にとって、至上の、永遠の宝物だ。