たまには本の話。
今年の連休中、しばらく積ん読にしていたこの本を読んだ。
昨年の発売時から、各所で話題となっており、本屋大賞の候補作でもあったため、知っている人(読んだ人)も多いだろう。
オビで推薦文を寄せている人たちは、多種多彩。
TVプロデューサーとして、今や大人気を誇る佐久間宣行さんや、QuizKnock出身のスーパークイズプレーヤー*1山上大喜さんの紹介も凄いが、個人的に一番痺れたのは…。
面白すぎる!! 驚くべき謎を解くミステリーとしても最高だし、こんなに興奮する小説に出会ったのも久しぶり。頼まれてもいないのに「推薦コメントを書かせて!」とお願いしてしまいました。小川哲さん、ほんとすごいな。
――伊坂幸太郎氏
僕が心から敬愛し、ほぼ全ての作品を読んでいる、伊坂幸太郎さんからの推薦文だ。
超人気作家である伊坂さんが、「面白すぎる!!」と大絶賛し、頼まれてもいないのに、「推薦コメントを書かせて!」と言うほど面白い作品。
いやぁ、もう、これは読まずにいられない。
…と思って、しばらく前に購入していたのだけれど、忙しさにかまけて積ん読にしてしまっていた(汗)
この本の作者である小川哲さんは、2015年のハヤカワSFコンテスト出身。
「ユートロニカのこちら側」で大賞を受賞してデビューした。
僕は一応、40年来のSFマガジン読者なので、その頃のことは一応覚えている。
選考結果やインタビューなどを読み返してみると、審査員たちの慧眼に恐れ入る。
単なるSF作家にとどまらない《器の大きさ》を、見事に見抜いていたからだ。
その後の大活躍については、読書好きなら、誰でもご存じの通り。
2018年刊行の「ゲームの王国」で、SF大賞のみならず、山本周五郎賞まで受賞。一気にブレイク。
2020年。短編集の「嘘と正典」で初の直木賞候補。
そして今年、2回目の候補となった「地図と拳」で、見事直木賞の栄冠を射止めた。
しかも、審査員たちが、こぞって大絶賛(こういうことは珍しい)してのぶっちぎり受賞だ。
今や、押しも押されもせぬ、超人気作家に駆け上った。
デビューの頃から知っている僕としては、実に感慨深いのだが、全く追いついていなかったので、慌てて色々と買い揃えた(汗)
「地図と拳」は気になるが、その前に、まずこれらを読んでおかなければ…と思ったのである。
デビュー作の「ユートロニカのこちら側」は、SFコンテスト受賞時に第1章だけ掲載されていたのを読んではいたが、通読するのは初めてだった。
今更読んだのが恥ずかしくなるほどの傑作で、やっぱりデビュー当時から凄かったんだなぁと実感。
「嘘と正典」は、多種多彩なテーマの短編集で、どの作品も実に読み応えがあった。
その後僕は、「ゲームの王国」に進んだのだけれど、その重厚な内容を掌握しきれず、読み進めるのに時間がかかっていた。(読書力落ちてるなぁ…)
そのため、気軽に読めそうな「君のクイズ」を先に読むことにしたのである。
と。例によって前置きが長くなってしまったが、その感想は、ひとことで言える。
いやぁ、面白かった!
重厚な超大作の「ゲームの王国」や「地図と拳」とは一線を画す、ライトな筆致なのに、その内容は決して薄くない。
クイズの世界を徹底的に掘り下げて、ワンアイデアで最後まで「読ませる」筆力が驚異的。
シンプルな話なのに、ただ、ひたすら面白い。
これもまた、小川哲ワールドの懐の広さを示している超傑作。伊坂さんも絶賛するわけだ。
僕は、YouTubeチャンネルの中で、QuizKnockが最も好きなのだけれど、QuizKnockファンならば絶対に痺れること請け合いの小説であることは保証しよう。
奇しくも昨日、日本推理作家協会賞受賞が決定。
純粋に、ミステリーか?と言われると、ちょっと微妙な気もするけれど、それだけ、この作品の世界が幅広いものであることを示していると思う。
超オススメ。
*1:QuizKnockメンバーの中でも、一、二を争うトップクラスの実力者だったと思っている。