先週末。
僕は、新宿駅前の酸素カプセル「フォレスト」に出かけた。
心と体が疲れた時は、たっぷり酸素を取り入れるのが、僕の大事なリフレッシュ習慣だ。
60分の酸素補給で、すっきりとした僕は、駅の周りをぶらぶらと歩いていると…。
新宿シネマカリテが目に留まった。
緊急事態宣言に伴い、東京都の映画館は、理不尽な休業に追い込まれているが、ミニシアターは対象外。
ただ、「映画鑑賞は危険」という誤った刷り込みをされてしまっている*1ため、その経営は苦しいと聞く。
ならば、応援しないわけにはいかない。
シネマカリテは、大作重視のシネコンとは異なり、もっぱら、通好みの作品をラインナップしている映画館。
僕は、数年前に、ここを訪れて、この映画を見た。
その時の印象は、なかなか良かった記憶がある。
だから、もし今上映している作品の嗜好が合えば、見ていこう。
そう思いながら、入口に近づくと、このポスターが目に入った。
「ブックセラーズ」だ。
僕は、本が大好きなので、このタイトルは見逃せなかった。
《本のない人生なんて。》というキャッチコピーが良いし、ニューヨークのブックフェアが舞台というのもいい。
ポスターの横に貼ってあったタイムテーブルを見ると、ちょうど上映時間が間近に迫っているところだった。
これはもう、僕に、「見てくれ」と言っているようなもの。
僕は、その偶然に運命を感じて、鑑賞決定。
わくわくしながら階段を降り…。
久しぶりに、この扉を開いた。
上映スクリーンは2番。
もともと78席しかない上に、感染症対策で1席おきの販売になっているから、40人も入れない。いやはや厳しい状況だ。
ただ、まぁ、この日はガラガラだったので、気にすることはなかったのだけれど…。
僕は、中央の特等席を確保して、約100分のブックワールドに浸った。
その内容は、僕の想定していたものとは、ちょっと違っていた。
僕は、ニューヨークのブックフェアにおいて、ドラマが起きるのだろうと思っていたのだが、そうではなかった。
ブックフェアそのものがテーマということではなく、そこに出店しているブックセラーズ(古書店の経営者)たちによるインタビューが中心のドキュメンタリーフィルムだったからだ。
延々とインタビューが続くため、正直に言うと《中だるみ》しているんじゃないかと思える部分もあった。
しかし、それを補ってあまりあるのが、「本」という媒体の魅力。
希少な本やエピソードが随所にちりばめられていて、本好きならば、きっと興奮する筈だ。
途中、NYの書店がどんどん廃業しているという話になり、オンライン販売や電子書籍の話題が続いた時は、ちょっと暗い気分になった。
あぁ、やっぱり、リアルの書店は厳しいのか、紙の本は廃れていくのかと思った。
しかし、どっこい、そんなことはなかった。
この映画は、紙の本ならではの魅力を、さまざまな角度から掘り下げていており、決して悲観的な内容になってない。
エンドロールの後にも、「とっておきのエピソード」が用意されているのも素敵だ。
ハリウッドの大作映画もいいけれど、こういった(一見退屈な)ドキュメンタリーをじっくり堪能することができるのは、映画館ならではの魅力。
本と映画のない人生なんて、僕には全く考えられない。
東京都による、映画館への暴挙(理不尽極まりない休業要請)が、1日も早く終わることを祈るばかりだ。
*1:空調対策は万全だし、クラスターを発生させたこともないのに!