吉田拓郎が、歌手活動からの引退を表明して、はや2年。
オールナイトニッポン特番などへの出演はあったものの、楽曲が発表されることはなかった。
しかし、拓郎さんは、やっぱり音楽の道に帰ってきてくれた。
この6月。
最新のベストアルバム「Another Side Of Takuro 25」が発売されることになったのだ。
新音源は含まれておらず、過去に発表した曲のリマスターリングということなので、これをもって復活と言えるのか?と言う意見があるかもしれない。
ミュージシャンは完全引退していても、ベストアルバムが(レコード会社主導で)発売されることはよくあるからだ。
しかし、このベストアルバムは、そういったものとは大きく異なる。
アルバムに封入されるセルフ・ライナーノーツには、拓郎さん自身が、それぞれの楽曲への思いを綴っている。
さらに、収録曲に合わせ、各時代の拓郎さんを追っての60ページにもなる写真集も、封入特典としてつけられているというではないか。
これはもう、拓郎さんの強い思い入れがなければ絶対に実現しなかった筈だからだ。
収録曲も渋い歌が並ぶ。
1.どうしてこんなに悲しいんだろう
2.せんこう花火
3.君が好き
4.ペニーレインでバーボン
5.風邪
6.I’m in Love
7.たえこMY LOVE
8.もうすぐ帰るよ
9.流れる
10.この歌をある人に
11.いつか夜の雨が
12.あの娘に逢えたら
13.午前0時の街[Disc 2]
1.裏街のマリア
2.冷たい雨が降っている
3.夜霧よ今夜もありがとう
4.Y
5.大阪行きは何番ホーム
6.とんとご無沙汰
7.マスターの独り言
8.全部抱きしめて
9.伽草子
10.車を降りた瞬間から
11.吉田町の唄
12.気持ちだよ
(ボーナストラック)「純情」※加藤和彦とのコラボ曲
拓郎さんは、これまでに何度もベストアルバムを発表していることもあってか、いわゆる一般的なメジャーソング(「結婚しようよ」「落陽」「流星」「旅の宿」等々)は含まれていない。
しかし、それが逆にこだわりを感じさせるし、これまでのベスト・アルバムとは一線を画した、まさに《吉田拓郎のアナザーサイド》と言える作品になっていると思う。
拓郎ファンならば、絶対に押さえておきたいところだ。
僕は、このベストアルバム発売を、吉田拓郎《復活》第1幕と考えている。
昨年末に放送された「オールナイトニッポン GOLD」において、こんな発表がなされているからである。
(拓郎さんは)放送開始7分後には、なんと、新作アルバム制作!について語り始めた。
引退宣言のことには触れず、言い訳もなく、ごく自然に、流れるように、アルバムを作る、と仰った。
新アルバムは、ニッポン放送の開局70周年記念に伴い、深夜放送やラジオをテーマにしたものになるとのこと。
拓郎さんが、音楽に帰ってくる!「吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD」で完全復活宣言! - 餃子ランナーは電子機器の夢を見るか?
これは、ニッポン放送が今年で開局70周年を迎えることに伴う「リップサービス」という捉え方もできそうだけれど、僕は、本気を感じた。
奇しくも、来年2025年は、拓郎さんにとってデビュー55周年となるメモリアルイヤー。
それと同時に、自らが会社設立に関わったフォーライフも50周年を迎える。
今回のベストアルバムが、26年ぶりに古巣のフォーライフから発売されるのは、その伏線と言えまいか。
ベストアルバム発売はもちろん楽しみだけれど、その先にある筈の《復活》第2章、完全復活にも期待したい。