大ヒットした「5分間SF」に続く、草上仁先生、待望の新刊が発売された。
「7分間SF」の登場だ。
そのタイトル通り、「5分間SF」の姉妹編とも言える位置づけの本で…。
表紙イラストや、オビの雰囲気も統一されている。
「5分間SF」が、各編10~20ページの収録作品だったのに対し、この「7分間SF」には、20ページ~30ページの作品が収録されている。
このぐらいの長さになってくると、もはやショートショート集ではなく、《短編集》といった趣だ。
草上仁先生は、SF界が誇る短篇の名手だから、その内容については、もちろん申し分ない。
この「7分間SF」には、かつて「SFマガジン誌」で発表され、埋もれたままになっていた、珠玉の作品たちが収録されている。
一番古い物では、1994年!に掲載された作品まで含まれているのだ。
僕は、こういった作品が、ようやく日の目をみることになって、とても嬉しい。
この「7分間SF」には、さらに、書き下ろし作品まで収録されている(!)ので、最高に嬉しい。
ただ…。僕は少し残念に思っていることもある。
草上仁先生は、決して、《オチ重視のSFショートショート作家》というわけではないからだ。
確かに、「5分間SF」では、そのコンセプトに特化させた作品を集めたことで、大ヒットに繋がった。
昨今、ミステリや児童書などで、気軽に読めるショートショート集が売れており、その時流を踏まえた編集者の手腕と言っていい。
しかし、草上仁先生の作品群は、オチにこだわらないものも含め、多種多彩であり、読み応えのある中編もある。
決して、《長さ》や《オチ》だけで語られる作家ではないのだ。
草上先生の短篇群は、まだまだ「SFマガジン誌」で埋もれたままになっているものも多いから、今後は、「10分間SF」や「20分間SF」とかが出るのかもしれない。
それはそれで嬉しいのだけれど、僕はどうしても言いたいことがある。
かつて、ハヤカワ文庫で発売されていた、傑作SF短編集を復刊して欲しいということだ。
左端の「こちらITT」から「江路村博士のスーパーダイエット」までは、全て短編集。(「お父さんの会社」と「東京開化えれきのからくり」は長編。)
それも粒よりの作品群が収録されている。
しかしなんと、これらの作品は、現在、全て絶版、になってしまっている。
僕は、これが、残念で残念で仕方がない。
「5分間SF」や「7分間SF」で、初めて草上先生の面白さを知るSFファンも多いだろう。
そんな人たちに、僕は、「まだまだ、山ほど面白い作品があるんだよ!」と、伝えたい。
《紙の本》としての復刊が難しいなら、電子版だけでもいいから、何とか復刊してくれないかなぁと思う。