昨日、12月25日。僕は、この日を指折り数えて待っていた。
僕が子どもの頃から、こよなく愛してやまない「SFマガジン」の、60周年記念号発売日だったからだ。
SFマガジンは、毎年2月号が創刊記念月号であり、昔は、大増ページの「特大記念号」となるのが通例だった。
しかし、2003年の2月号からは、創刊記念号を謳わなくなり、通常月と同じ仕様に変わってしまった。
ただ、大きな節目だった2010年の創刊50周年記念号は、翌月の3月号まで含めた2ヶ月連続の超特大号になっている。
それから10年。
今月号は、節目の60周年記念号になるため、僕は大いに期待した。
ということで、僕は、退勤時間が終わるや否や、都内の大手書店にダッシュ。
念願の記念号をゲットした。
僕は、その表紙イラストを見て、とても懐かしい思いを抱いた。
それもその筈、今回のイラストレーションは、かつて長い間SFマガジンの表紙イラストを担当した、加藤直之氏によるものだった。
しかも、加藤氏が、自身の記憶に残っている過去の表紙絵をモチーフに描いたということで、僕が懐かしさを感じたのも当然と言える。
ということで、表紙を見ただけで、僕は流石創刊記念号だ、と思った。
…が、誌面のボリューム感は、僕の期待とは異なるものだった。
《記念号》ではあるけれど、《特大号》仕様ではなく、そのページ数も価格も前号と変わらない。財布には優しいが、ちょっと寂しい気がした。
ただ、その内容は、記念号にふさわしいものであり、僕は昨晩からずっと貪り読んでいる。
なんと言っても、60周年記念に合わせた、60本のエッセイが圧巻。
「私の思い出のSFマガジン」というテーマで、豪華絢爛な執筆陣が並んでいる。
以下の作家・評論家の方々だ。
筒井康隆・伊藤典夫・梶尾真治・新井素子・今岡清・小尾芙佐・巽孝之・夢枕獏・森岡浩之・柳下毅一郎・安田均・高橋良平・大野万紀・難波弘之・宮脇孝雄・高千穂遙・水鏡子・酒井昭伸・長山靖生・川又千秋・大森望・鹿野司・中村融・山田正紀・古沢嘉通・菅浩江・沼野充義・内田昌之・森 優・椎名誠・中野善夫・渡辺英樹・林譲治・森下一仁・山岸真・笹本祐一・中原尚哉・谷甲州・小林泰三・ジェームス怒々山・日下三蔵・吉田隆一・小谷真理・上田早夕里・酉島伝法・香月祥宏・丸屋九兵衛・堺三保・小川一水・伴名練・北原尚彦・飛浩隆・神林長平・野尻抱介・橋本輝幸・牧眞司・草上仁・鳴庭真人・添野知生・鏡明(誌面掲載順)
なんと言っても、筒井康隆先生の登場が素晴らしい。
筒井先生は、「SFマガジン」の黎明期に、その誌面を飾り続けた、言わずと知れた日本SFの第一人者だ。
「SFマガジン」への新作小説掲載は、1990年10月号(創刊400号記念特大号)掲載の「禽獣」を最後に途絶えている。
しかし今回、記念エッセイで登場して下さったことが、何より嬉しい。
僕は、先生が書かれた「SFマガジン」創刊当時のエピソードを、実に感慨深く読んだ。
筒井先生以外の方々の記念エッセイも、もちろん読み応えがあった。
最近SFマガジン誌では見かけなくなった方々も多かったため、僕は、そういった皆さんの作品を通常号でも読みたいなぁ…と思った。
今回の目玉は、記念エッセイだけではない。
現日本SF界において、2大巨頭とも言える、神林長平先生と飛浩隆先生の新連載がダブルで開始。
・「哲学的な死〈前篇〉 戦闘妖精・雪風 第4部」神林長平
・「空の園丁 廃園の天使III」飛浩隆
ともに、人気シリーズの最新作をひっさげての登場だ。
さらに、今年の海外SF人気ナンバーワンとなった「三位」の続編プロローグ部分を特別先行掲載するなど、記念号にふさわしい渾身の内容となっている。
記念号にふさわしい、日本中のSFファン必読必携の1冊だ。
超オススメ。