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37年ぶりの完全復活!「定本 バブリング創世記」は、全ツツイスト必携必読の書だ!!

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嬉しくてたまらない。

久しく絶版になっていた、「あの」伝説の短編集が、《定本》として復刊されたからである。

f:id:ICHIZO:20190910040721j:plain定本 バブリング創世記 (徳間文庫)

そう。「バブリング創世記」だ。

旧版の文庫版(写真左)が発売されたのは1982年なので、なんと、37年ぶりの復刊。

僕は、そもそも、これほどの名著が、なぜ絶版になってしまったのか疑問だったのだけれど、完璧な形で復活してくれたのだから、文句は言うまい。

収録作品は、以下の全10作。

  • バブリング創世記
  • 死にかた
  • 発明後のパターン
  • 案内人
  • 裏小倉
  • 上下左右
  • 廃塾令
  • ヒノマル酒場
  • 三人娘

短編集の巻頭に収録されている表題作は、衝撃的な書き出しで始まる。

f:id:ICHIZO:20190910040805j:plain

ドンドンはドンドコの父なり。

ツツイスト*1ならば、冒頭の一文を見ただけで、懐かしさに震えるだろう。

これぞまさに、言語の魔術師・筒井康隆先生の真骨頂と言える作品で、37年経った今であっても、全く古びていないし、斬新。

もちろん、古びる筈がない。

この作品は、画期的な《聖書のパロディ》なのである。聖書の歴史を考えれば、37年などという月日は、ほんの一瞬に過ぎないからだ。

他ならぬ筒井康隆先生の作品である以上、単純なパロディにとどまる筈はなく、独自の世界を作り上げている。

ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み、ドンドコドン、ドコドンドンとドンタカタを生めり…。

実にリズミカルなバブリング(ジャズのスキャット)が、この後も、延々と16ページ(!)にわたって続き、結末には感動が押し寄せてくる壮大な作品だ。

この短編集の魅力は、もちろん、表題作だけではない。

「小倉百人一首」のパロディあり、ホラーあり、シナリオあり、ショートショートありと、実に多彩。

とりわけ衝撃的な作品は、これ。

f:id:ICHIZO:20190910045137j:plain

「上下左右」だ。

見開きが20マスに分割されており、その1マス1マスが、4階建てマンションの部屋という設定。

ページをめくる毎に、それぞれの部屋で同時進行に起きる事件が時系列で綴られていく。

各部屋での出来事は、それぞれ無関係なようでいて、そうではなく、最後には、あっと驚く結末が控えている。

筒井先生にしか思いつけない、そして書けない、斬新な作品だ。

この作品は、もともと、SFマガジン誌に掲載され、その後、「バブリング創世記」の単行本にも収録された。

しかし、特殊なスタイルゆえに、旧版の文庫版ではカットされてしまった、いわば幻の作品だった。

その後、SFマガジン700号記念のアンソロジー文庫には収録されたものの、筒井先生の文庫本としては初収録。

しかも、短編集「バブリング創世記」への復活という形だから、とりわけ嬉しい。

既に、旧版の文庫本を持っているというツツイストは多いと思うけれど、この「上下左右」を読むだけでも、新版を購入する価値があると思う。

今回の復刊が素晴らしい理由は、まだある。

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なんと、筒井先生による自作解説がついているのだ!

ツツイストならば絶対に見逃せないポイントで、僕は、痺れながら読み耽ってしまった。

この他、「発明後のパターン」という短編では、《旧版》《最新版》がまとめて読める*2ようになっていて、これぞ定本!と言える本になっている。

筒井康隆先生の魅力がたっぷり詰まった驚愕の短編集が、満を持して、完璧な形で復刊。

僕はそれが、本当に嬉しくてたまらない。

「時をかける少女」や「旅のラゴス」などで、新たに筒井康隆先生のファンになった人には、是非ともオススメしたいし、旧版を持っているツツイストであっても、必携必読の一冊だ。

定本 バブリング創世記 (徳間文庫)

定本 バブリング創世記 (徳間文庫)

 

*1:筒井康隆先生に心酔し、その作品をこよなく愛する者。

*2:37年前の文庫では、《旧版》のみしか存在していなかったが、その後、《最新版》が書かれ、「天狗の落とし文」という掌編集に収録されていた。


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