右を見ても、左を見ても、自粛ばかりで滅入ってくる。
首相が、「大規模イベントの自粛要請」をかけてからは、加速する一方だ。
《大規模》の基準が明確に示されていないために、とにかく《人が集まるイベント=自粛》になりつつある。
何もそこまで自粛しなくてもいいだろう…と思うものまで、ありとあらゆるイベントが、自粛の波に押されて、中止に追い込まれている。
先週僕が参加する筈だった、筒井康隆先生のトークイベントは、参加者たった60人の、しかも、書店内オープンスペースでの開催だったのに、中止。
こんな時代だから仕方がないのかとは思うけれど、どうにもこうにもやりきれない。
僕は、毎日、満員の電車に乗り、人混みのターミナル駅構内を歩いて通勤しているので、とても理不尽に感じる。
とにかく、1日も早く、新型コロナウイルス騒動が終息することを祈るばかりだ。
こんな状態だから、もちろん、「サイン会」なども軒並み自粛となっている。
人が集まる上に、接触イベントでもあるのだから、この流れの中にあっては、必然の中止。
しかし僕は、昨晩、仕事帰りに、サイン会へ参加してきた。嘘じゃない。
『SFが読みたい! 2020年版』選出ベストSF2019国内篇第 1 位記念『なめらかな世界と、その敵』伴名練さんWEBサイン会開催!https://t.co/7cM32pIgqe
— 早川書房公式 (@Hayakawashobo) 2020年2月6日
「SFが読みたい!2020年版」で国内篇1位を獲得した作家、伴名練さんのWEBサイン会である。
WEBサイン会とは、《WEBで事前に申し込み、(自分だけの)サイン本を受けとることができる会》といったような意味で、いわゆる「普通の」サイン会とは別物。
そのオリジナルサイン本の受取期間が、昨日から始まったのだ。
ということで、僕はイベント会場(というか何というか)の三省堂書店に行き、レジでそれを受け取ってきた。
「Gyoza Runner様」と書かれた、僕だけの、世界に1冊しかないサイン本。
サイン会特典として、赤坂アカさんによる装画イラストポストカードと、刊行記念エッセイ「あとがきにかえて」のリーフレットも一緒にもらえた。最高だ。
このWEBサイン会が告知されたのは、2月6日なので、まだ《自粛の嵐》が起きる前だったから、当然、「普通の」サイン会を企画することもできた筈。
しかし、伴名練さんは、顔出しをしていない作家であるため、WEBサイン会という形式になったのだろう。
結果的には、それが大成功になった。
もしも昨日、「普通の」サイン会が予定されていたならば、当然自粛、中止に追い込まれてしまっていた筈だからである。
もしかすると…。僕は、ふと思った。
今回、このサイン会がWEB形式になった理由は、もうひとつあるのではなかろうか。
伴名練さんは、稀代のSF作家だけに、こういった自粛の波も予見し、「あえて」WEBサイン会を行ったのではないかとも思えてきたのだ。
まぁ、それは考えすぎだと思うけれど、今後、こういったタイプのサイン会が増えてくるかもしれない。