昨晩。ついに僕はそれを受け取った。
箱の外装には、しつこいぐらい沢山のシールが貼付されていた。
「絶対にこの商品を破損させてはならない」という発送元の強い意志が感じられる。
それは、箱を開封したあとも同様だった。
大量の緩衝材、その1。これを取り外すと…。
緩衝材。その2。
僕が待ちわびていたものは、その中に、何重にも渡って包み込まれていた。
僕は、発送元の丁寧さに感謝しながら、いざ取り出すときに落としてしまったりすることのないよう、十分に注意した。
僕の場合、それが十分にあり得るから怖い。
ブログのネタとしては面白いが、今回ばかりは洒落にならないからだ。
慎重に慎重な作業を重ねながら、ゆっくりと緩衝材のヴェールを取り外すと、ついに、それは姿を現した。
断筆人形だ!
かつて「宝島30」誌の表紙を飾り、ついこの間まで、世田谷文学館で開催されていた「筒井康隆展」の展示物でもあった逸品。
僕はこれを、史上空前のオークションにおいて、ゲットしたのである。
人形を見ていたら、あのときの興奮が甦ってきて、たまらない気分になった。
その人形は石膏で作られており、ずっしりと重く、リアリスティックな造形だった。
正直、筒井先生にはそれほど似ていないと思うのだけれど、「断筆」という言葉にふさわしい雰囲気が伝わってくるオブジェだ。
折角だから、この人形が表紙を飾った雑誌と並べてみよう。
何となく雰囲気が違うのは、雑誌のほうは、本物のサングラスをかけているからだろう。
これだけで、グッと筒井先生っぽくなる。
僕がゲットした断筆人形は、針金製のメガネになっており、レンズの部分が空洞になっているため、ちょっと寂しい。
雑誌と全く同じにはできないけれど、雰囲気だけでもサングラス仕様にしたくなってきた。
うん。決まった。そうしてみよう。一緒に方眼紙も買おう。
断筆関連書籍ともコラボレーション。いやはや懐かしい。
筒井先生が「断筆」を宣言された時、そして、それから数年間。
僕は、目の前が真っ暗になったことを思い出す。
だから、先生が断筆を解除して下さったときは、本当に本当に嬉しくて、天にも昇る気持ちになった。
あれから、もう20年以上が経つ。
今年も、筒井先生は新作短編を発表してくださった。関連書籍も多数発売になった。そして、「筒井康隆展」まで開催。
ツツイストである僕にとって、夢のような1年だった。
そんな1年の終わりに、断筆人形をゲットすることができ、最高に幸せだ。