昨日は、全将棋ファンにとって、見逃すことのできない大勝負が実施された。
伝統ある「名人戦」と並ぶ、将棋界最大の棋戦、竜王戦。
羽生竜王に対して、気鋭の広瀬八段が挑む七番勝負、その第6局だ。
これまで、羽生竜王の3勝2敗で進んでおり、竜王が勝てば、タイトル防衛とともに、棋界タイトル通算100期(!)という、凄まじい記録がかかっている。
ちょうど1年前、羽生(当時)棋聖は、挑戦者として竜王戦に出場した。
因縁の渡辺竜王に挑んで、タイトルを奪取。見事、竜王に返り咲き、前人未踏の永世七冠を達成したことは記憶に新しい。
僕は、その快挙に感動して、将棋熱が再燃。専門誌である「将棋世界」誌の定期購読も始めたほど。
竜王就位式における、羽生先生と藤井先生のツーショット。
棋界における2大スターの握手写真だ。痺れずにはいられない。
それから僕は、将棋に嵌まりまくっていく。
今の僕には、棋力も時間も無いため、実際に将棋を指すことは殆どなく、いわば「観る将」状態。
見れば見るほど、棋士たちは誰も彼もが魅力的で、十分楽しかった。
そんな棋士たちの中において、羽生竜王、永世七冠の存在は、まさに《別格》。
かつては、棋戦七冠を全て保持していたこともあるし、複数冠は当たり前だった。
一昨年。三冠だった状況から、立て続けに王座と王位を失い、心配になったのだけれど、それは杞憂だった。
その後、渡辺明二冠(竜王・棋王)から竜王を奪い取って悲願の永世竜王に。そして、永世七冠達成!となったのである。
ドラマチック性も兼ね備える羽生竜王は、まさに、棋界最大のスーパースター。
僕は、そんな羽生先生を、心から尊敬している。
今回、竜王戦の挑戦者となった広瀬八段は、現在、将棋界でのレーティング1位を誇り、もっとも乗りに乗っている棋士だ。
しかし、そんな広瀬八段相手に、ここまで3勝2敗。
やっぱり羽生先生は底力がある!だからきっと今回で決めてくれる!
僕は、そう祈っていた。
ということで、昨日の昼食休憩になるや否や、僕は、iPhoneで「将棋連盟Live」アプリを開いた。
このアプリは、日本将棋連盟が運営しているもので、棋戦の状況が、ほぼリアルタイム確認できるという、素晴らしいアプリケーション。
毎日、さまざまな棋戦がレポートされているけれど、昨日のメインイベントはなんと言っても竜王戦だった。
竜王戦は、2日制で実施され、昨日は、その2日目。
夜まで激しい攻防が繰り広げられる「筈」だったため、白熱状況をチェックするべく、僕は、ライブアプリを立ち上げてみて、愕然。
なんと…。
昨日の昼間。12時7分。午後の食事休憩に入る前に、勝負が終わっていたからである。
これは竜王戦史上初めてのスピード決着ということで、僕は、思わず唖然としてしまった。
各種分析によると、54手目が勝負の分かれ道だったようだ。
羽生竜王が、わずか2分の考慮時間で指した、たった1手の悪手から、形勢は急展開してしまった。
まだまだ時間はたっぷりあったのに、いったいどうしたんだ、羽生先生…。
しかし、まだ、竜王戦は終わったわけじゃない。第七戦がある。
僕は、今回はどうしても羽生竜王に防衛をしてもらいたいと思っているので、全身全霊をかけて応援を続けていく。
今回の竜王戦は、羽生竜王にとって、単なる防衛戦ではないからだ。
なんと言っても、タイトル獲得通算100期という、前人未踏の大記録がかかっている。
しかし、もしも今回竜王位を失うと、27年ぶりに無冠に陥落してしまう。まさに天国と地獄。
逆に考えれば、これまで、27年もの間、何らかの(一時期は七冠全ての!)タイトルを保持していたことが凄すぎる。
棋界におけるタイトルの数は、昨年から加わった叡王戦を含めても、たった8つしかないから、一生タイトルとは無縁の棋士も数多くいる。
そう考えると、たとえいったん無冠になったとしても、羽生先生の業績や栄光は輝いているし、不滅だ。
しかし、やっぱり僕は、まだ、羽生「九段」なんて、まだ呼びたくない。
将棋世界 2019年1月号
まさに正念場。
でも、これまで沢山のドラマチックな舞台を作り上げてきた羽生竜王のことだから、これもきっと、その味付けのひとつ。
ドラマを盛り上げるための布石だと信じよう。