これぞSFラブコメディ!と言える映画がやってきた。
タイトルの「パーム・スプリングス」は、アメリカ、カリフォルニア州にある、大リゾート地の名前。
この映画は、そこで開かれた結婚式の日を舞台に描かれる。
映画のストーリーは単純で、ひとくちに言ってしまえば、SF映画によくある「タイムループ」ものだ。
1983年に上映された「時をかける少女」(原田知世主演の実写版)以来、日米の映画で、数限りなく上映されてきたテーマになる。
タイムループのパターンは色々あるが、この映画では、《寝たり死んだりすると、結婚式当日の朝に戻ってしまう》のが特徴。
同じ1日を永遠に繰り返すタイプで、設定としての目新しさはない。
だからなのかもしれないが、この映画の主人公であるナイルズは、すっかり開き直っていて、劇中でこんなことを言ったりする。
いやはや何とも、人を食った説明だ。
それもそうだろう。
ナイルズは、この映画による物語が始まる前から、既に、何十万回も同じ日を繰り返して過ごしているのである。
現状を達観し、絶望し、ただ気楽にビールでも飲んでいたくなる気持ちになるのもわかる。
しかし、この映画で語られる「特別な1日」に、変化が起きる。
妹の結婚式に出席していたサラが、とあるきっかけから、《タイムループ》仲間になってしまうのだ。
この展開がなんとも斬新。
既に何十万回も同じ1日を繰り返してきたナイルズにとっては、もはや日常であっても、サラにはそれが耐えられない。
だから…。
何度も何度も、そこから抜け出そうと努力することになる。
しかし、結局うまくいかないので…。
というのが、この映画の大きなポイントとなる。
繰り返される1日を謳歌するナイルズとサラ。
ここらあたりまでは、予告編で明らかになっている情報だが、実際は、それぞれに隠された謎がいくつもあり、捻りが利いている。
映画は、ひたすら同じ1日を繰り返すため、展開によっては飽きそうになってしまうのだけれど、飽きない。
後半は、「あぁ、そういうことだったのか!」ということで、ピースが繋がり、爽快な気分になる。
解決方法が「おぃおぃ!」という気がしないでもないけれど、なんだか許せてしまう居心地の良さが、この映画には漂っている。
ラストシーン後のエンドロールでも、「にやっ」とする展開が待っているので、途中で席を立たないように。
タイムリープは、もちろんSFの世界だけの話だが、コロナ禍に伴い、在宅で同じような1日を繰り返し飽きてきている人も多いのではなかろうか。
この映画は、そんな人たちへの清涼剤になるような気がする。
オススメ。