現役最年長棋士、桐山清澄九段。
タイトル獲得4期の実績を持ち、通算1,000勝に迫る勝利を挙げている名棋士だ。
しかし、そんな棋士にも将棋界の規定は厳しい。
2019年、桐山九段は、《フリークラス落ち》*1に伴い、年齢制限対象者になってしまった。
そのため、実質的には、《ほぼ引退》状態。
竜王戦を除く、2020年度以降の公式戦の参加資格を失うことになってしまったのだ。
竜王戦においても、5組に残留できなければ即引退だったため、条件は極めて厳しかった。
そんな2020年度の竜王戦で、桐山九段はドラマを演出する。
2020年7月7日。
負ければ引退が決まっていた、竜王戦5組残留決定戦。
井出四段と、千日手局差し直しの上、激戦を制し、現役続行を決めたのだ。
それから1年…。
昨日行われた竜王戦で、桐山九段は、再びドラマを魅せてくれた。
【第34期竜王戦5組残留決定戦・桐山清澄九段-上村亘五段】
— 読売竜王戦【公式】 (@yomiuri_ryuo) 2021年5月14日
「いぶし銀」の指し回しで圧倒した桐山九段(73)が勝利して現役続行を決めました。上村五段は6組降級です。
現役最年長棋士・桐山九段の2期連続引退回避は、ひそかな快挙です。
写真は日本将棋連盟提供 #竜王戦 #桐山清澄 #上村亘 pic.twitter.com/w2jRPyl3cw
「あの」藤井二冠に勝ったこともある上村五段と、142手に及ぶ激闘を繰り広げ、勝利したのだ。
僕は、将棋連盟モバイルのアプリで、その棋譜を追っていて、最後は胸が熱くなってしまった。
これで通算996勝。
過去、将棋界において、1,000勝以上を上げている棋士はたった9人しかいないので、それに続く大記録だ。
桐山九段は、次年度も、竜王戦に限ってしか出場できないし、しかも、今度は4組に昇級しない限り、引退に追い込まれてしまう。
だから、通算1,000勝を達成するためには、4連勝しなければいけない。
条件は極めて厳しいが、2年連続で夢をつないでくれた桐山先生なら、奇跡を起こしてくれるかもしれないと信じている。
桐山九段の命運がかかる竜王戦において、現在、そのタイトルを保持しているのは、豊島将之竜王。
そう。
他ならぬ、桐山九段の愛弟子だ。
そんな愛弟子の豊島竜王は、昨日のTwitterでこう呟いている。
対局者のお二人お疲れ様でございました。
— チーム豊島 (@abT_toyoshima) 2021年5月14日
師匠の現役続行が決まり嬉しいです。(豊島) https://t.co/WR8iMkvOAi
朴訥ながら誠実な、豊島竜王の人柄は、桐山先生の下で培われたものだろう。
そんな弟子からのコメントが、僕の心に大きく響いた。
*1:棋戦の根幹となる「名人戦」で、C級2組を陥落すること。