「名人」位を賭けて争う順位戦は、棋界で最も重要な棋戦。
順位戦は、C級2組,、C級1組、B級2組、B級1組、A級の5クラスで成り立っており、どんな棋士であっても、C級2組からのスタート。
毎年ひとつずつしか進級できないため、A級にたどり着くまで、最低でも4年かかる。
「あの」藤井聡太竜王(五冠)でも、C級1組→B級2組への昇級においては、1年足踏みをしてしまったほど、厳しい棋戦だ。
羽生九段は、そんな順位戦で、たった10人しかいないA級の座に29年間(名人在位期間も含む)も在籍し続けていた。
しかし、昨年…。
残念ながらA級の座から陥落。
僕は大いにショックを受け、フリークラスへの転向や電撃引退まで覚悟した。
しかし、羽生九段は、しっかり前を向いて、B級1組での現役続行を宣言。僕は大いに胸をなで下ろしたことを思い出す。
昨日は、そんなB級1組棋士たちの一斉対局が行われた。
ランク1位の羽生九段は、2位の山崎八段と対戦。
山崎八段は、羽生九段とともに、僕が最も好きな棋士なので、気持ちはとても複雑だったが、こと、順位戦に限っては、羽生九段を応援することに決めた。
羽生先生には、何としてもA級に返り咲いて欲しいと思っているからだ。
…結果は、序盤からリードを奪った羽生九段が、危なげなく圧勝。
そして、この勝利をもって前人未踏の1,500勝を達成した。
記念すべき節目の勝利を、順位戦で飾るところが、羽生先生のスターたる所以だ。
1,500勝達成の記者会見。
羽生先生は、穏やかな口調ながら、しっかりと前向きに今後の決意を語られている。
将棋界は今、藤井竜王(五冠)一色のムードになっているが、それはまだ、ここ数年の話。(それでいて五冠というのは凄すぎるけれど…。)
羽生先生は、藤井五冠の登場まで、20年以上も将棋界を牽引し続けてきたのである。
将棋界初、前人未踏の1,500勝達成は、まさしくその証明、そして復活の狼煙だ。
あらたな栄冠を目指して、これからも元気に指し継いでくれることを願いたい。