昨日、2023年3月19日。
将棋界に、新たな、そして大きな歴史が刻まれた。
それを達成したのは、またしても藤井竜王(王位/叡王/王将/棋聖)だ。
昨日は、将棋界8大タイトル戦の1つ、棋王戦第4局が行われる日で、藤井竜王は、朝から渡辺明棋王と熱戦を繰り広げていた。
そんなさなか…。
NHKテレビでは、年間4つしかない一般棋戦のひとつ、「NHK杯」が中継されていた。
一般棋戦は、持ち時間が短い早指し戦であり、長い持ち時間で戦うタイトル戦とは大きく性格が異なる。
また、前年優勝者であっても、次年度は、トーナメント形式の棋戦を勝ち抜く必要がある。
藤井竜王は、そんな一般棋戦でも数多くの優勝を重ねてきたが、なぜか、NHK杯だけは苦手としており、これまではベスト8にも入ることができなかった。
しかし、今年度は順調に勝ち進み、決勝まで進出。
4大一般棋戦のうち、他3つ(銀河戦/日本シリーズ/朝日杯)は制していたので、NHK杯で優勝すれば、史上初のグランドスラム達成ということになった。
NHK杯は、テレビ収録での対局となっているため、実際に決勝戦が行われた日は不明。
だから、その結果を知るには、昨日の朝、NHKテレビの将棋番組を見るしかなかった。
前述の通り、昨日は棋王位を賭けたタイトル戦が行われており、AbemaTV の将棋チャンネルで生放送されていたため、藤井竜王ファンにとっては、忙しい午前中となったろう。
そして…。
見事に、鬼門だったNHK杯で優勝。(していたことが判明。)
一般棋戦優勝回数45回を誇る、羽生善治九段(永世7冠)でも達成できなかった、史上初の、同一年度一般棋戦グランドスラムを実現したのだ。
いやぁ、もう、ほんとに、凄いというしかない。
そんな快挙を達成していたにも関わらず、棋王戦での藤井竜王は、おくびにも出さす(当たり前だ)勝負に集中していた。
タイトルは5番勝負となっており、これまでは藤井竜王の2勝1敗。
あと1勝で、タイトル獲得という状況だった。
ただ、渡辺明棋王は、昨年まで、10期連続で棋王位を防衛してきた猛者。そう簡単に土俵は割らない。
後半まで、手に汗握る互角の攻防が続いた。
しかし、ほんの僅かな隙で生じた、渡辺棋王の緩手を見逃さなかった藤井竜王が、一気に攻め込んで…。
棋王位を奪取!
史上2人目、史上最年少での六冠を達成した。
羽生九段が1994年12月に六冠を達成した時は、まだ叡王位がなく、「全七冠中六冠」だった。現在は「全八冠中の六冠」なので、その意味合いは若干異なる。
しかし、当時の羽生九段は、24歳2ヶ月で達成したものなので、それより3年6ヶ月若い20歳8ヶ月で六冠を達成したことは、快挙と言うしかない。
しかも、まだ藤井ドリームは終わっていない。
藤井竜王は、竜王位と並ぶ将棋界の最高峰タイトル「名人位」の挑戦者にもなっているからだ。
名人位を賭けたタイトル戦は、来年度4月からとなるが、その相手は、奇しくも、またしても渡辺明名人。
名人戦は7番勝負で、先に4勝した方が名人位を奪取。
最速なら、5月には、史上最年少での七冠保持者が生まれることになる。
現名人である渡辺明という棋士は、20歳で初タイトル(竜王)を獲得して以来、38歳になる今まで、無冠になったことがない。
しかし今回、もしも名人位を失うと、「渡辺明九段」になってしまうのだ。
それだけは何としても避けたいと思っているのではないか。
これまでの対戦成績(藤井竜王16勝/渡辺名人3勝)を考えると、藤井竜王の奪取が濃厚だが、渡辺名人にも、意地がある筈。
藤井竜王が名人を奪取して最年少七冠を達成するか、渡辺名人が研究と秘策で立ち塞がるか。
来期の名人戦は本当に注目だ。