将棋界には、竜王と名人を頂点として、8つのタイトルがある。
現在、そのタイトル保持者は、たった3人しかいない。
藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖)
渡辺明名人(棋王)
永瀬拓矢王座
とりわけ、藤井竜王(5冠)の凄さは、今更僕が語るまでもなかろう。
2016年のデビューから、わずか6年で、最高位の竜王を含む5冠を獲得したのは、まさに驚天動地。
現在の将棋界は、藤井竜王を中心に回っていると思って間違いない。
しかし、そんな藤井竜王が出現する前、将棋界を何十年も牽引しつづけてきた棋士がいる。
もちろん、羽生善治九段だ。
かつては、将棋界の全7タイトル*1を独占したこともある天才。
しかも、その7タイトル全てにおいて、長期在位者だけが得ることのできる永世称号*2を獲得。
「永世7冠」保持者として、2018年には、将棋界初の国民栄誉賞まで授与されているのだ。
2017年に、渡辺明(当時竜王)から竜王位を奪取し、タイトル獲得通算99期を獲得した時は、100期など時間の問題だと思っていたのだけれど…。
そこから、「あと1つ」にもがき続けることになってしまった。
その後、棋聖位、竜王位を失い、2020年にリベンジを賭けて挑んだ竜王戦でも、タイトルを奪還できなかった。
そして…。
29年間保持し続けてきた、順位戦*3のA級からも陥落。
あぁ、もう羽生先生の時代は終わってしまったのかなぁ…と思ってしまった瞬間もあった。
しかしどっこい、羽生先生は終わってなどいなかった。
雌伏の21年度が終わり、22年度は華麗に復活。
渡辺名人や永瀬王座、豊島9段といった強豪ひしめく王将リーグにおいて、なんと全勝という快挙を成し遂げたのである。
いやぁ、凄い。本当に凄い。
これにより、羽生九段は、藤井王将への挑戦権を獲得。
全将棋ファンが夢見ていた、ドリームマッチが実現することになった。
こんなに嬉しいことはない。
羽生九段と藤井王将(竜王/5冠)の対戦成績は、過去1勝8敗。
この数字だけ見ると、タイトル獲得はかなり厳しいが、でも、望みはある。
こと、今回の王将リーグにおいて、羽生九段の強さは極まっていたからだ。
近年苦手としていた永瀬王座や豊島九段を倒しての挑戦と言う経緯を考えると、過去の成績にとらわれる必要はないと思う。
もちろん、藤井王将の壁は極めて厚いが、羽生九段が全盛期の強さを取り戻したとなれば、決して見劣ることはない…と信じている。
タイトル戦の結果はともかくとして、まずは、夢の対決を堪能できる喜びに浸りたい。