足柄峠走は、終わったあとの《ご褒美》が必須。
僕の家から、足柄峠の拠点となる山北までは、片道2時間近くかかる上、峠走は、結構ハードなトレーニングだから、《ご褒美》なしでは、遠征するモチベーションが持てないのだ。
峠を下ったフィニッシュ地点には、さくらの湯という温泉が控えており、これは間違いなく大きなご褒美となっている。
温泉は、峠走の疲れを十分に癒やしてくれる。
施設内には、広々とした座敷スペースがあり、料理なども注文可能。
だから、温泉に入った後も、ゆったりくつろげるのだけれど、唯一、難点がある。
ビールと餃子がない、ことだ。
温泉が気持ちよければ気持ちよいほど、やっぱり、その後はビールを飲みたくなるのが心情。
ビールを飲むならば、そのお供には、やっぱり餃子をつけて堪能したい。
しかし、残念ながら「さくらの湯」では、その願いが叶わないため、僕は、帰路の途中で、仕切り直しの《餃ビー》を堪能するのが常。
過去、僕はそんな流れでさまざまな店を訪れた。
これらの店に再訪するのも一考だったが、折角、3年4ヶ月ぶりの遠征なのだから、新規店を開拓しようと思った。
ということで今回は、山北→松田/新松田(乗換)→渋沢駅で下車。
その駅前にある、この店を訪問した。
「中華料理 橙(だいだい)」だ。
山北から松田/新松田までは1駅。新松田から渋沢駅も1駅しかないため、「さくらの湯」を出てから、30分以内には到着可能。
温泉の余韻を残したままで、ビールを飲むことができる。素晴らしい。
しかもこの日は、強い日差しが照りつけて、とても暑く、最高のビール日和だった。
昼から飲むビールほど美味しい物はない。それが、峠走のあととなれば尚更。
店の入口には、ランチセットの看板が立っていた。肉まんセットや飲茶セットなどもあるようだ。
いわゆる「町中華」といった感じの店ではなく、ちょっと本格志向の中華料理店に思えた。
入店。
店内は明るく、広々としていた。
ちゃんとした布のおしぼりがでてきた。好印象。
ランチ飲茶セットは、点心6品にチャーハン、サラダ、杏仁豆腐もついて、想像以上に本格的。
海老蒸し餃子なども入っているから、餃子ランナー的にも悪くない。
食後のコーヒーまで含めて税込1,210円というのは、かなり良心的な価格だと思う。
僕は、ちょっとだけ心が揺れたけれど、すぐに思い直した。
僕の入店理由は、《ランチを堪能すること》ではなく、《ビールを飲むこと》だった筈。
危ない危ない。まずは、餃子までの繋ぎとなる、ビールのアテを探さなければ。
そんなビール党にとっても、この店は絶好。
リーズナブルなおつまみが多数用意されていたからだ。
おつまみ系の炒め物も充実。
僕は、これらの中から、「キムチ」と「もやし炒め」を注文した。ともに300円だから安い。
ほどなくしてそれは、ビールと共に登場。
いやぁ、良いじゃないか。
特に、もやしにんにく炒めが最高だった。
シンプルながら、質量十分。パンチの効いた強烈なガーリック風味で、にんにく好きにはたまらない味だった。
この店は、本格的な一品料理も多数あり、どれも、ハーフサイズが用意されていたため、ひとり飲みにも、もってこい。
色々と目移りしたけれど、結局僕は、「焼ギョーザ」だけを注文。
にんにくもやしが、想像以上に凄い量で、餃子以外を食べきれる自信が持てなかったからだ。
いざ餃子を食べてみて、余力があったら、他の料理も注文してみよう、と思った。
結果的に、この判断は大正解だった。
僕が、キムチともやしにんにく炒めでビールを流し込んでいると…。
ビッグな餃子がやってきた!
筐体の大きさだけではなく、厚みも十分。ずっしりとした具の詰まっていることが、ひと目でわかった。
これは期待できそうだぞ。
餃子とビール。史上最強のマリアージュ。
昼間からこれを堪能できる幸せ。いやはやたまらない。
箸で持つと、ずっしり感がある。
手作り、手包みらしく、きっちりとしたヒダまで美しい。
僕は、大いに期待を込めて囓りつき、そして、驚いた。
圧倒的なニラと肉!
ニラたっぷりの餃子を出す店は珍しくないが、それは大抵、野菜系の餃子だ。
キャベツや白菜といった野菜に混じって、ニラが最も存在感を示している餃子だ。
しかし、この店の餃子は違う。
具は、ほとんどニラと肉で占められており、ほとんど他の野菜を感じない。
ニンニクも(おそらく)入っていないから、肉とニラの風味だけが純粋に感じられる。
これはなかなか新鮮な味わいだ。
肉がたっぷり詰まっているので、見た目以上にボリュームがある。
肉系餃子なのに、ニラたっぷり。ビールにももちろん合うし、食べ応え十分。
僕は昼から最高の餃ビーを堪能した。
この日はこれでお腹がいっぱいになってしまったのだけれど、他にも色々気になる料理があるので、いつかまた峠走帰りに立ち寄りたい。