昨年のM-1グランプリ決勝。
最終決戦に残ったヤーレンズは、「ラーメン屋さん」のネタを披露した。
そのネタの中で、客と店員の、こんなやりとりがある。
ボケを繰り出してばかりで、なかなかラーメンを作ってくれない店員(楢原)に対して、客(出井)が…。
「早く作れよ、早くラーメン作れよ!って言ってんだよ。」
「まだ麺ができてなくて…」
「あぁ、そうなの?」
「マジカルバナナします?」
「いいよ。繋がなくていいから別に。茹でてんだから」
「はい!マジカルバナナ。(歌い始めて…)バナナと言ったら~♪」
「丸美屋!…ってなっちゃうだけだから!」
いやぁ面白い。何度見ても聴いても面白い。
漫才のネタに解説をつけるのは、実に野暮なのだけれど、一応解説させていただくと…。
マジカルバナナにおいて行われる「バナナと言ったら○○」のくだりと、丸美屋のCMでお馴染みの「マーボと言ったら~♪丸美屋」を組み合わせたところが素晴らしすぎる。
流石ヤーレンズ!という魅力が詰まった秀逸なボケとツッコミだ。
このネタで準優勝を獲得したヤーレンズに、年明け早々、丸美屋から素敵なプレゼントが届く。
丸美屋では、もちろんバナナを販売しておらず、「バナナといったら~丸美屋」というのは、ネタ上の世界でしかない。
それなのに、懐の深い会社だなぁ…と思った。
しかし。
丸美屋の懐の深さは、そんなレベルではなかったのである。
昨日、丸美屋の公式YouTubeチャンネルで、突如こんなWeb CMが公開されたのだ。
ネタが現実になった!?
SNSのXでは、公開直後から話題になり、特にヤーレンズファンは歓喜している。
このCMでは、マジカルバナナのくだりはないので、ヤーレンズのネタを知らない人が見たら、「なぜ、丸美屋でバナナ?」と戸惑ってしまうかもしれない。
《※丸美屋はバナナ売ってません》という注釈も入るので、じゃぁ、なぜ、こんなCMを作るんだ?と思うかもしれない。
しかしこのCMは、そんな単純な内容ではないのだ。
何度も見ていると、その奥深さがわかってくる。
出井さんの登場シーンでは、壁の後ろにカレンダーが映るのだけれど、6月6日のところが、バナナ印でマーキングされている。
この日は、丸美屋にとって重要な記念日。
同社が制定した、「麻婆豆腐の素の日」なのだ。
ヤーレンズの2人が、CM内で調理(というか何と言うか…)したバナナを食べるシーンにも仕掛けがある。
出井さんと楢原さんが座ったテーブルのバックにあるテレビでは、美味しそうな麻婆豆腐の映像。
2人が料理を味わっているシーンに、バナナは全く映らず、しかもレンゲを使っているため、まるで麻婆豆腐を食べているかのように思えてくる。
CMの最後は、「バナナと言ったら~丸美屋」で締められるが、「麻婆豆腐と言ったらだろ!」とツッコミたくなる。
そう。
このCMは、バナナだらけであるにも関わらず、結果的には「丸美屋と言えば、やっぱり麻婆豆腐だよなぁ」ということを再認識させるようになっているのである。
テレビのCMでは「???」で終わってしまうかも知れないが、WebCMだからこそ成り立つ高度なテクニック。
反響がすぐに拡散するWeb時代、SNS時代だからこそ成り立つ、斬新なマーケティング手法なのだ。
…などと、知ったかぶって偉そうに書いている僕も、丸美屋の掌の中にいるんだろうなぁ(汗)