フルマラソンは、大量にカーボ(炭水化物)を消費するスポーツ。
だから、レース直前の時期、身体にカーボを詰め込む「カーボローディング」という栄養摂取法がよく知られている。
パスタなどで行われることが一般的だと思うのだけれど、パスタの原料は、小麦粉。そう、小麦粉の大量摂取が、カーボローディングのポイントなのだ。
ならば、小麦粉の皮にくるまれた餃子を大量に食べれば、当然、同じ効果が期待できる。餃子は完全食だから、カーボのみならず、たんぱく質も、脂肪も十分摂取可能。
だから僕は、レース前になると、カーボローディングならぬ、餃子ローディングを行うことが常になっている。
その対応は、もちろん、異国に行っても変わらない。
ということで、シカゴマラソンのレース前日。チャイナタウンにある店を訪れた。
今回の旅程では、体調を壊したり、身体を痛めたりしたため、殆ど街を出歩くことができず、観光も食べ歩きもままならなかったが、餃子ローディングだけは、やっぱり外せなかった。
チャイナタウンは、宿泊していたホテルから、CTA*11本で15分程度だったし、目指した店は、駅からすぐの店だったので、出かけることに決めた。
店頭は事務所風で、だから一瞬気がつかなかったほど。
外からちょっと覗いてみると、中に客はおらず、この外観なので入り辛かったのだけれど、地球の歩き方でも、安くて美味しいとオススメされていたので、意を決して入店。
店内の雰囲気は、普通の中華料理店だったのだけれど、写真は撮り損ねてしまった。
僕がテーブルにつくと、中国人と思われる店員が、ニコリともせずにやってきた。そして、メニューをバサッと僕の席に置き捨てて去って行く。
僕は一瞬唖然としたが、地球の歩き方にも、「ただし、サービスは期待しないように」と書いてあったので、なるほどと思いながら、メニューを眺めた。
と言っても、注文するものは餃子に決まっているのだから話は簡単。
夜の店内用メニューには、焼餃子である「鍋貼」とスープ餃子の「上湯水餃」しか餃子系料理がなかった*2ので、どちらも注文。
ということで、別の無愛想な店員が、ドカッと置き捨てていったポットのお茶を飲みながら、待つこと5分程度。
鍋貼、そう、焼餃子が来た!
僕は一瞬、そのビジュアルに唸った。焼餃子は確かに焼餃子なのだけれど、何だか黒いタレのようなものにたっぷり浸かって出てきたからである。
僕は、一瞬、黒酢か?と思ったけれど、そうではなかった。まずはタレだけちょっと舐めてみると、酸っぱさはまるでなく、むしろ甘い。いったいこれは何なんだ。
スプーンが付属してくる理由も不明。このタレも飲めってことか…?
僕は、餃子にこれはないよなぁと思いながら、でも、大人しく食べるしかないと思っていた。
謎の正体を尋ねようにも、店内は殺伐としていて、無愛想を絵に描いたようなおばさんたちが3人だけ。質問に答えてくれそうな雰囲気は皆無。
ましてやここはアメリカ。さらにチャイナタウン。僕の語学力では、話が通じる気がしなかったため、謎は謎のまま割り切って、食べ始めてみると…。
なんと、これが美味しいじゃないか!
皮は厚く、両面をこんがり焼かれているので、焼餃子というより揚げ餃子に近い。
具は、肉中心だけれど、野菜や椎茸なども含まれていて、食感がいい。そんな皮と具に、このタレが合う!のだ。
ボリュームたっぷりのスナックといった趣で、個人的には、酢醤油よりもむしろ、こちらのタレの方が合うと思った。
何でも、第一印象だけで判断しちゃいけないのは、餃界でも同じなのだなぁと痛感。
そして。
上湯水餃が来た。
これは、また別の、機嫌の悪そうな店員が持ってきて、テーブルの上にドカッと置き、さらに、いきなり無言で丼の中に箸を突っ込んだ!
僕は、一瞬「何だ何だ?」と思ったが、その理由はすぐにわかった。レンゲが完全にスープの中に水没しており、それを掬い上げるためだった。
店員は、レンゲを掬い上げると、何も言わずに立ち去っていく。しかし、レンゲはとても小さく、しかも、滑りやすい構造になっているようで、店員が去ると、また自然にスープの中に沈んでしまった。
僕は、沈んだレンゲを、溜息交じりに掬って、丼の外に置いた。
嫌になっちゃうなぁ…とは思ったけれど、もう、今更怒っても仕方ない。スープはあまり飲みたくない気分だったが、とりあえず、餃子だけは食べてみることにした。
スープの中には、水餃子が、たっぷり10個程度入っていた。
こちらの中身は、殆ど肉。ぎっしりと詰まっていて、食べ応えがあった。
皮もぷりぷりしていて、こちらの味もなかなかだった。焼餃子も水餃子も相当のボリュームで、味は美味しく、$11程度だったので、コストパフォーマンスも悪くない。
店員の態度を考えると、チップを上乗せしなければいけないのが、どうにもこうにも釈然としなかったが、仕方ない。郷に入っては郷に従え、だ。
僕は、最初からチップ込みの金額だと考えることにして、数ドルをプラスして払った。
ということで、シカゴでの餃子ローディングは終了。
「Three Happiness 三喜」という店名とはほど遠い接客だったけれど、悔しいかな(?)その味は結構良かった。
特にあの焼餃子は、他ではあまり食べられない味なので、もしもまたシカゴに行ったら、食べに行きたくなるかもしれない。