オールドSFファンにとって、「たんぽぽ娘」は、あまりにも名高い名作だ。
僕も、「叙情SF」「タイムトラベルSF」を思い浮かべるときは、この作品の名前が常に頭に浮かぶ。
短編の小品だが、SFファンならずとも、誰に対しても薦められる佳作だと思っている。
ただ、現状、この作品を収録した本は全て絶版で、最近のSFファンには馴染みの薄い作品にもなっていたため、まさかこんな突然話題になるとは思わなかった。
話題のきっかけは、剛力彩芽主演の「ビブリア古書堂の事件手帖」にて、今週の月曜日に取り上げられたことらしい。
僕はこのドラマを見ていないので、詳しいことはよくわからないのだけれど、放映後、中古本相場は沸騰し、この短編を収録した本は、オークションなどで軒並み高値をつけていた。
今朝の時点で、2万円超!
「たんぽぽ娘」が収録されているアンソロジーはいくつかあるが、特に、それが表題作となっているコバルト文庫版の高騰ぶりは衝撃的だ。入札終了まで相当時間があるのに、この状況は凄すぎる。いったいいくらまで吊り上がるのだろう。
もし、たまたまそれを持っている人がいたら、一気に数万円が転がり込んでくるということか。いやはや恐ろしき哉テレビの力。
実は僕も、コバルト文庫版の同書は持っている。そもそも僕は、「たんぽぽ娘」作者であるロバート・F・ヤングの、ファンなのだ。このアンソロジーに限らず、ヤングの短編集である「ジョナサンと宇宙クジラ」だって持っているほど。
僕がにわかファンではない証拠は、昨年6月時のエントリーを参照していただきたい。
もちろん僕は自分の本を売る気はないが、エントリーのネタ用にと、昨晩は、本棚を探しまくってみた。しかし、どうしても見つけることができなかった。痛恨。
どこかにあることは確実なのだけれど、遅い帰宅で疲れていたせいもあり、書棚の奥底*1まで探しきれなかった。いや、そもそも、実家に残してきてしまったかもしれない。
ということで、紹介はできないなぁ…と諦めかけていたのだけれど、ふと、「SFマガジン」にも掲載されていた筈だということを思い出した。
で、発見。
SFマガジン2000年2月号。
創刊40周年記念特大号だ。特大号の名にふさわしい豪華な執筆陣が並び、その中には、ロバート・F・ヤングの名前があった。
「たんぽぽ娘」に辿り着いた!
あぁぁ、懐かしい。僕は、この号で読んで以来なので、およそ13年ぶりの再会だ。昨晩は感動しながら貪り読んだ。
今朝も睡眠不足気味ではあるのだけれど、ちょっと心地良いのは、この素晴らしい短編に酔いしれたせいかもしれない。
やっぱり、「たんぽぽ娘」は最高だ。
【耳より(?)情報】
まさに絶妙なタイミングで、「たんぽぽ娘」を含むヤングの短編集発売が予定されている。
それも、定評ある奇想コレクションシリーズだから文句なし。バカ高いオークションに手を出さなくても、5月まで待てれば、「たんぽぽ娘」だけでなく、ヤングの叙情溢れる短編も楽しめて、しかも、2,000円弱で入手できるのだ。感動。
ヤングの短編は、「たんぽぽ娘」に限らず名作揃いに決まっている筈*2だから、短編ひとつに数万かけるより絶対にお得。今すぐにでも絶対に読みたいということでなければ、オークションよりこちらをお薦め。
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