少年コミック界に燦然と輝くレジェンドとして、誰もが知っている藤子・F・不二雄先生。
『ドラえもん』『パーマン』『オバケのQ太郎』『キテレツ大百科』等々…その代表作は、枚挙に暇がない。
そんな藤子・F・不二雄先生には、大人向け《SFコミック作家》という一面もあった。
そもそも、ドラえもんやパーマンにしても、その設定は間違いなくSFだから、大人向けのSFだって、もちろん素晴らしいに決まっているのだ。
今、藤子・F・不二雄先生のSF短編は、大いに注目されている。
NHKBSプレミアムで、実写版のドラマ放映が始まり、全SF短編収録のコンプリート・ワークスも刊行開始となった。
そんなタイミングで、満を持して、「SFマガジン」が、最高の特集をひっさげて登場。
全100ページにも及ぶ、渾身の「藤子・F・不二雄」大特集号だ。
SFマガジン誌と藤子・F・不二雄先生の繋がりは古く、同誌への初登場は1970年。
石森章太郎(その後「石ノ森章太郎」に改名)、永井豪、松本零士、そして、藤子不二雄(安孫子素雄先生との合作ペンネーム)。
超人気漫画家勢揃いで、「いやぁ、凄いぞSFマガジン!」と思わずにいられない。
僕はこれをリアルタイムで読んだわけではないが、このバックナンバーをゲットした時は、大いに感動したものだ。
藤子不二雄先生は、1983年に刊行された、SFマガジン300号への祝辞の中で、こう綴っている。
自身の漫画歴の中で、最も嬉しかった出来事のひとつとして、「SFマガジンから短編依頼を受けたこと」をあげている。
そう。
藤子・F・不二雄先生は、間違いなく、SF魂を持ったコミック作家だったのだ。
そんなSFマガジンが組んだ渾身の大特集。素晴らしいに決まっている。
特集号の巻頭には、1971年の同誌に掲載された「ヒョンヒョロ」が再録。
僕がSFマガジン購読を開始したのは1981年だったので、リアルタイムでは読んでいない。
ただ、筒井康隆先生による「’71日本SFベスト集成」(徳間文庫版/絶版)に収録されたため、それで大きな衝撃を受けたことを思い出す。
1971年のSFを代表するだけでなく、SF短編コミック史に輝く名作なのだ。
現在発行されている、ちくま文庫版の「’71日本SFベスト集成」には、なぜか、この「ヒョンヒョロ」が収録されていない。
だから、今回のSFマガジンへの再録は、嬉しい限り。
藤子・F・不二雄先生SF短編の総解説も素晴らしい。
26人の名だたる書評家、作家たちによって、全110に及ぶSF短編の詳細な解説が行われているのだ。
この他、「佐藤大×辻村深月」対談も読み応えがあるし、実写ドラマ版プロデューサーへのインタビューもある。
これはもう、完全に、間違いなく、永久保存版だ。
今号は、予約の段階から凄まじい人気で、編集後記によると「ここ三十余年で最大の初版部数」になったとのこと。
だから現在は、まだ在庫があるようだけれど、基本的に雑誌は《売り切り》スタイルなので、いざ品切れになってしまうと、入手困難となるのは必至。
藤子・F・不二雄ファンで、もしもまだ未入手の人は、できるだけ早くゲットしておくことをお薦め。