《ソウルの女王》アレサ・フランクリンについての、実話に基づく物語。
「リスペクト」がロードショー公開された。
僕は、彼女の人生も歌も殆ど知らない状態で、鑑賞。
劇中、ふんだんに披露される歌のパワーに驚愕したが、それと同時に、少し後悔した。
この映画は、アレサ・フランクリンの偉大さと凄さを知った上で見るべきだったからだ。
2時間25分に及ぶ長尺映画であるが、歌が多いため、その時間ほどの長さは感じない。
ただ、歌に挟まれながら進行する物語は、説明不足であるように思えた。
人種差別、性的問題、DV、アルコール依存症…等々。
テーマがヘビーなわりに、未整理のまま、行ったり来たりで進行しているようなイメージを受け、どうにも感情移入がしにくいのだ。
これはアレサ・フランクリンのことをよく知る、ファンに向けた映画なのだろうか…?
そう思えば納得なのだけれど、ちょっと残念な気もした。
もちろん、僕の理解力不足もあるだろう。
ただ、「ボヘミアン・ラプソディ」の完成度と比べてしまうと、粗が目立つように感じてしまった。
「ボヘミアン・ラプソディ」は、(脚色は多いものの)フレディ・マーキュリーに関する伝記映画と言える。
そういった意味では、「リスペクト」と同じジャンルの映画だと思う。
僕は、「ボヘミアン・ラプソディ」を見るまで、フレディ・マーキュリーが、クイーンというバンドのリードボーカルであることも知らなかったし、その死因さえもわかっていなかった。
しかし、映画を通じて、彼の人生における苦悩は手に取るようにわかったし、だからこそ、最後のライブシーンでは、鳥肌が立つほど興奮した。
それに比べると、ちょっと…と思ってしまうのだ。
「リスペクト」は、主演のジェニファー・ハドソンが、実際に、アレサ・フランクリンになりきって歌っている。
「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレックは口パクだから、その点においては、ジェニファー・ハドソンの凄さを感じた。
特に、クライマックスの歌唱シーンは圧巻と言える。
ただ、僕は、それに至るまでの物語を理解しきれていないせいか、モヤモヤした気分のまま、エンドロールになってしまった。
この映画中、僕が最も驚愕したのは、エンドロールでの、アレサ・フランクリン本人による歌唱。
「リスペクト」の本編内では、30歳までのアレサ・フランクリンを描いて終わっているが、それよりも数十年後の本人登場。
かなりの高齢であるにも関わらず、その歌は強烈で圧倒的だった。
これを見て、そして、帰宅後、アレサ・フランクリンの情報を収集して、僕はようやく、彼女の偉大さと凄さを思い知った。
こんなにも強烈で圧倒的なシンガーだったのか…。
「リスペクト」は、アレサ・フランクリンの長い人生における《一部》を切り取ったに過ぎない。
ただ、その期間には、強烈な光と影があり、だからこそ、ここまで素晴らしい歌手になったのだろうなぁ…。
そんなアレサ・フランクリンのドキュメンタリー映画が発表されていたことも、僕は、「リスペクト」鑑賞後に知った。
この映画を先に見ていたら、「リスペクト」は、もっとのめり込んで見ることができたかもしれない。