最寄り駅は、都営新宿線の篠崎駅。
僕は、Googleマップの地図を頼りに店へ向かったが、もしもそれがなかったら不安に感じていたかもしれない。
いや。
それであっても、僕は、道すがら不安を覚えていた。
目指した店は、駅から1.4kmもある上、駅前通りを抜けるとすぐ、閑静な住宅街に入ってしまったからだ。
駅からは、ほぼ一本道なので、迷いようがないのだけれど、あまりに寂しい道が続く。
本当に、この先に、目指す店があるのだろうか…?
今は、19時までに入店しなければ、ビールが飲めなくなってしまうため、僕は足を速めた。
本当にこの地図で合っているのか?店はあるのか?
そんな心配をし始めた頃…。
あった!
1974年開業の町中華「菊亭」だ。
店名の上には、「皮から手造りの餃子」という文字。心が躍る。
創業45年を超える昭和の老舗だから、餃子を中心としたオーソドックスな中華料理の店なのかと思いきや…。
入口の看板では、チリコンカンがデカデカとプッシュされていた。
シンガポールカレービーフンなどというメニューもあり、なかなかチャレンジングな店のようだ。
入店。
テーブル席は常連客で埋まっていたけれど、幸い、カウンターは空いていたので、その隅に着席。
やおら、メニューを眺める。
メニューの左端には、「皮から手造りの餃子」と大きく書かれている。
やはり、この店は餃子の店なのだ。
僕は、もちろんそれと瓶ビールを合わせて注文した。
ビールには、ちょっとしたアテがついていた。
僕は、それをつまみにしながら、店内の掲示や厨房での調理風景などをつらつらと眺めていた。
店は、出前も行っているようで、ひっきりなしに電話が入っていた。厨房は大忙しだ。
そうこうしているうちに…。
「皮から手造り」餃子がやってきた!
焼き色の美しさに惚れ惚れする。
その具はパンパンに詰まっており、しかも、かなりのビッグサイズ。
これで350円というのは、実に安い。僕は、ちょっと感動さえ覚えていた。
囓ってみよう。
うぉぉぉぉー。
旨すぎる!
野菜のザクザク感をしっかり残した具。強烈なニンニクパンチ。カリカリでもちもちの皮。僕の「超ストライクゾーン」餃子だ。
この餃子の食べ方について、店のWebサイトには、このように案内されていた。
お酢=酸味と甘みが増します。
醤油=しょっぱさが増します。
ラー油=コクと辛みが増します。
自分のタレを探してみてください。
確かに、どんな調味料でもぴったり合う下味がついており、そのまま食べても十分に美味しかった。
そしてもちろん、ビールとの相性も抜群。
僕は、素晴らしい店に出会えた感激で、心が震えた。
篠崎までは、僕の家から電車で40分以上かかるし、駅からも20分歩く必要がある。
だから相当にハードルが高いのだけれど、それでも、遠征した甲斐があったと思える餃子だった。
僕は、出前やテイクアウトができる近所の人が最高に羨ましくなった。
それぐらい僕は、この餃子が気に入った。
折角1時間かけて遠征してきたのだから、もう1人前食べようかもと思ったが、僕は、あえて違う選択肢をとることにした。