この本には「永遠」が詰まっている。
谷川俊太郎先生の読者や中島みゆきさんのファンにとって、一生の宝物になる本だと言っていい。
みゆきさんは、デビュー前の学生時代から谷川俊太郎先生に憧れ、尊敬し続けてきた。
国民的詩人である谷川俊太郎先生は、みゆきさんを《詩人》として評価し続けてきた。
この本は、50年にも渡るそんな2人の交流記録だ。
僕は、この本を先週入手して以来、もう、何度も何度も読み返し、そのたび毎に震えている。
1980年に行われた「谷川俊太郎・中島みゆき対話」は、コアなみゆきファンの間では、伝説になっている。
この本では、それを完全再録しているだけでなく、2022年の対話も収録している。
42年の月日を経て、再び伝説が生まれたのだ。
レジェンド詩人2人が交わす会話は、ひとつひとつが実に味わい深く、心に染み入る。
2022年の対話で、みゆきさんが最後に語った言葉「では、三百年後に。」の深さと言ったら!
谷川俊太郎先生は、この対話の2年後となる2024年。惜しまれながら92歳でこの世を去った。
しかし、ふたりの対話はまた、時空を超え、現世をも超えて、三百年後に行われるに違いない。
この本を読んだ人ならば、それが決して「絵空事」ではないということがわかる筈だ。
そんな対話だけでなく、他の収録内容も読み応え十分。
中島みゆきが描く谷川俊太郎。谷川俊太郎が描く中島みゆき。お互いの評価視点があまりにも鋭すぎて痺れる。
交互に掲載されている2人の「詩」には、どれもこれも心が揺さぶられてしまう。
2人が互いになげかけた㉝の質問も、その回答ひとつひとつが味わい深い。
これらをひと通り読んだあと、あらためて2つの対話を読み返すと、心に新たな響きをもたらしてくれる。
この本の中には、間違いなく、2人の永遠が詰まっているのだ。
巻末に収録された、みゆきさんの「谷川俊太郎さんに会ったことがありますか」で、僕は思わず泣きそうになってしまった。
みゆきさんから谷川俊太郎先生への、とめどない愛に溢れた、圧巻の追悼詩だったからである。
谷川俊太郎先生の身体は、残念ながらもうこの世にないけれど、まだまだ2人の対話は続いていく筈。
三百年後の対話を、僕もどこかで読めることを祈りたい。