横浜港でのランを終えた後、僕は、ちょっと急いでいた。
衣類などでパンパンになったバッグに、iPad Proを無理矢理詰め込み、次の目的地に向かって走っていた。
今から考えれば、別に、走らなくてもよかった話。
単に、僕の乗る電車が1本遅れるだけのこと。それでも、次の予定にはぎりぎり間に合う。
いや。たとえ遅れたとしても、それで世界が変わるわけじゃない。
だから僕は、走るべきではなかったのだ。
しかし、その時の僕は、何かに取り憑かれたように急いでいた。
背中でバックパックが揺れるので、走りにくいなぁと思いながら、でも、止まらなかった。
そして、突然、悲劇が起こる。
バタン
というもの凄い音が、僕の後ろで響いたのだ。
慌てて振り返ると、なんと、僕のiPad Proがアスファルトの上に落ちていた。
僕は、なぜなんだ!と思った。iPad Proは、バックに入れていた筈。それなのに、なぜ、と思った。
そして、その理由はすぐに判明した。
バックパックはパンパンに詰め込まれていたため、走っている間の衝撃で、少しずつファスナーが開き、半開きになっていたのだ。
走っている間、僕が背中に感じた違和感は、そのためだった。
しかし僕は、それに気がつかずに走り続けたため、最後にバックパックへ詰め込んだiPad Proがバックから飛び出して、アスファルトに叩きつけられた、ということになる。
不幸中の幸いだったのは…。
このケースを装着していたこと。
Apple Pencilフォルダもついている、とても便利なケースだが、落下の衝撃で、Apple Pencilもケースから外れて投げ出されてしまっていた。
Pencilという名前ではあるが、1万円以上もする電子機器なので、僕は、その破損も、一瞬頭によぎった。
ただ、何はともあれ、本体の損傷が心配だ。
僕は、電車に乗って、席に座ったあと、ケースから本体を取り出して確認した。
液晶も…。
背面も、一応無傷に見える。
助かったか!と、僕は一瞬思ったのだけれど、世の中そんなに甘くなかった。
筐体を細かく確かめてみると…。
底部のカドに大きな傷がついてしまっている…。
反対の側面にも、僅かな傷が発生した。
Apple Pencilも含め、動作には問題が生じていないようだし、バタンと落下させたことを考えれば、これだけで済んだことを喜ぶべきかもしれない。
ケースの該当部分には、大きな凹みができている。
ケースは、落下の衝撃を緩めてくれる役割も果たしていた筈だから、それを含めて考えれば、「救われた」と考えるのが自然だろう。
プラス志向の人であれば、きっと、そう考える。
しかし僕は、マイナス思考の人間だから、「iPadをしっかりバッグの奥に詰めていれば…」「あの時走らなければ…。」と思ってしまうのだ。
あぁ。