嬉しくてたまらない。
僕の最も好きな将棋棋士である山崎隆之八段が、「将棋世界」の表紙にドカンと掲載されたからだ。
僕は、「将棋世界」を愛読しはじめて4年になるが、山崎八段の顔が表紙に掲載されたのは、ここ4年間で初めてのこと。
だから本当に嬉しい。
表紙に掲載された理由は、この雑誌の連載企画である《師弟》に伴うもの。
将棋界では、師弟関係が存在し、山崎八段は、森信雄七段門下。
今回は、山崎八段と森七段を巡るエピソードが、巻頭から掲載されており、実に興味深い。
山崎八段は、若手の頃から、その《照れのある》《自虐的な》トークに人気があった。
最も有名なのは、二十代で、将棋界で最も大きな棋戦である「名人戦」の解説を務めた時のトークだ。
一緒に解説をしているのは、美しくて強い女流棋士の矢内さん。それを踏まえてご覧いただきたい。
僕は、将棋好きになってから、数限りないほど動画を見たが、その中でも、かなり異色で衝撃的。
「神聖な棋戦の生解説で、こんなことを話す棋士がいるのか!」と驚いた。
このエピソードには続きがある。
この動画から6年半後、第3期女流王座戦の前夜祭において、直前に結婚を発表していた矢内女流に対し、山崎八段が、花束贈呈するプレゼンターを務めたのだ。
いやぁ、流石は山崎八段だ。期待を裏切らない。
だからもちろん、将棋界では非常に人気があり、それは、羽生永世七冠と共演した、この動画でも確認できる。
画面に流れるコメントで、山崎八段(山ちゃん)が、将棋ファンからいかに愛されているかがよくわかるだろう。
山ちゃんが人気なのは、もちろん、トークによるものだけではない。
その将棋が、実に独創的で魅惑的なことも、人気者である理由。
将棋には、《定跡》と呼ばれる、決まった手筋が数多くあるが、山ちゃんは、全くその定跡にこだわらずに指す。
最近の将棋は、AIによる研究が進んで、序盤は同じような展開になることが多いのだけれど、山ちゃんはそれを良しとしない。
「引き分け→指し直し」を目指す手筋の《千日手》嫌いも有名で、これまで、千局あまり戦った棋戦のうち、たった1局しか千日手を指したことがない。
これは現役棋士の中でもダントツの少なさであり、そこに僕は、山ちゃんのプライドと美学を感じる。
いやぁ、本当に魅力的な棋士なのだ。
今回の「将棋世界」では、そんな山ちゃんが、森先生宅に住み込んだ少年時代からのエピソードが掲載されており、実に興味深かった。
連載は、前後編になっており、今回は、山崎八段の《悔恨》で締めくくられていた。
その後が非常に気になるので、次号も引き続き楽しみにしたい。