今年度最大の話題作。
山本周五郎賞を含む文学賞3冠に加えて、年末恒例の各社ミステリベストで、ダントツ4冠を達成した注目の作品。
「地雷グリコ」をようやく読んだ。
僕は、12月8日に書いた、ミステリベストに関するエントリーで、この本に言及。
それからすぐに同書を購入し、先週末、あっという間に読了してしまった。
僕が購入した本には、直木賞候補&文学賞3冠(本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞)のオビが付属していたが、現在書店に並んでいる本には、ミステリベスト4冠のオビがついているようだ。
ミステリベスト4冠が至難の業である点について、僕は過去のエントリーで詳しく書いている。
2018年時点では、4冠の完全制覇作品はなかった。3冠でも十分快挙だったのだ。
しかし…。
今から3年前の2021年。夢の4冠作品がついに出現する。
過去2回の3冠を制覇している米澤穂信が、満を持して送り出した「黒牢城」で、ようやくそれを実現させたのである。
「地雷グリコ」は、そんな超絶快挙をあっけなく達成してしまった。
しかも、昨年11月発売であるにもかかわらず、だ。
昨年発売の本は、直近刊行の作品が上位になりやすいミステリベストにおいては、極めて不利。
しかしそんなビハインドをものともせず、ぶっちぎりでの4冠制覇なのだから、いかにこの作品が図抜けているかがわかるだろう。
それだけの注目作品であるから、僕も大いにハードルを上げて読み始めたのだけれど…。
一気通貫。
ページを読む手が止まらない、圧倒的な面白さで、即日に読み終えてしまった。
冒頭の表題作「地雷グリコ」では、《グリコ、パイナップル、チョコレート》で知られる、じゃんけんゲームが大々的に行われる。
僕のような昭和世代のオッサンが、子どもの頃に行っていたような遊びが、大がかりな舞台設定とともに、高校で行われることに衝撃。
どんなに大がかりな舞台設定をとっていても、やっていることは単なるじゃんけんゲームなので、そんなに凝ったトリックは無理だろう。
…と思ったが、僕は、いとも簡単に騙され、そして驚いてしまった。
物語は連作形式をとっており、2話目以降は、対決がスケールアップしていく。
百人一首、神経衰弱、だるまさんがころんだ(!)、再びじゃんけん。
そして、トランプゲームのポーカー。
誰もが知っている既存の遊戯に、特殊要素を加えて、ゲーム要素を大幅に強化。
そんなゲームにおける究極の知恵比べ。逆転につぐ逆転が、とにかく心地良い。
大金がかかっている勝負も出てくるが、そのノリは至って軽く、青春小説ともいっていいほど。
主人公である射守矢真兎(いもりやまと)を含め、登場人物のキャラクター設定は、至ってライト。
誰も死なないし、怪我もしない。探偵もいない。
しかし、これは紛れもなく究極の推理ゲームであり、本格ミステリなのだから、たまらない。
個人的には、既存のじゃんけんに独自ルールを付与した「自由律ジャンケン」のトリックに痺れた。
作者である青崎有吾さんは、前述「このミステリーがすごい」誌のインタビューで、続編の執筆についても言及されている。
僕は、今からそれが大いに楽しみだ。