この映画を見たのは、日曜日の峠走帰り。
あれから、もう3日も経っているのに、未だに僕は、その余韻に酔いしれている。それぐらい濃密で、実に素晴らしい映画だった。
やっぱり、クリント・イーストウッドは凄いなぁ。そして、トム・ハンクスは巧いなぁ。あらためて、そう感じた。
この映画は、実際に起きた事故をもとにした実話。
2009年1月。厳寒のNY。
155名を乗せたU.S.エアウェイズ1549便が、ラガーディア空港を離陸直後、バードストライクに遭い、両エンジンの機能を喪失してしまう。
タイミング的に、空港には戻れないと判断した機長は、ハドソン川に不時着するという方法を選択。しかし、なんと、乗客全員が助かったのだ。
あの日のことを、僕は今でも鮮明に覚えている。大好きなNYで起きた、衝撃的な事故。忘れることなどない。もちろん、僕は、当時のブログ*1でも言及している。
そう。まさに、「奇跡」に胸をなで下ろしたのだ。
あの事件を、クリント・イーストウッドは、どのように描いたのだろう。僕は、非常に大きな興味を抱えて劇場に赴き…。
そして、唸った。
題材はシンプルであり、直線的に描いていたら、味のない映画になってしまっていた可能性もある。
しかし、そこは流石クリント・イーストウッド。もちろんそうはならなかった。
映画冒頭。クライマックスを思わせるようなシーンでいきなり引き込まれ、あっという間の96分。しかし、実に濃密な時間だった。
そのストーリーは、時系列ではなく、過去と現在、現実と仮想のシーンを行き来しながら、描かれていく。
乗客全員、155人を救った「英雄」である筈の機長が、「容疑者」として追い込まれていくのだ。
僕は、あの奇跡の裏側に、こんな事実があったことを知らなかったため、本当に驚いた。
主人公である機長、SULLYは、押し寄せる苦悩を振り払うかのように、何度も、夜中のNYの街をランニングする。
僕は、そのシーンもこれまた心に響いた。
この時に、機長が抱えていた苦悩と比べるのは、あまりにおこがましいけれど、僕も、モヤモヤを感じた時は、走ってばかりいるからだ。
この映画のため、白髪に扮したトム・ハンクスは、完全に、機長の「SULLY」になりきっていた。名優は、今回も流石の演技を見せたが、その機長を支える、副機長役のアーロン・エッカートがハマり役。
重く、暗くなりがちなテーマに、絶妙なユーモアというスパイスを加え、それが、「SULLY」の存在を際立たせることに成功していると思う。
この映画は、実に爽快な余韻を残してエンドロールに突入するが、その余韻は、このアーロン・エッカートがもたらしてくれる。
一つ間違えば、大惨事になりかねなかった事件、そしてその裏側にあった、深刻な問題をテーマにしているのに、まさか、こんな形の余韻が残ると思わなかった。
この後味の素晴らしさだけでも、見に行く価値がある映画だと思う。
超オススメ。
パンフレットも、もちろん購入。
厳寒の季節に、翼の上で救助を待つ乗客たち。
映画を見終わったあとでも、155人全員が助かったというのは、本当に信じられない。まさに、これは「奇跡」だったのだ。
いやぁ、本当に素晴らしい映画。できればIMAX画面でもう1度見てみたい。
この映画には、原作もある。これも是非読んでみようと思う。
*1:旧ブログの「言い捨ての小部屋」時代に書いたものだが、そのエントリーは、全てこのブログにリダイレクトさせている。