最近、街なかを走るランナーは、皆、マスクやバフなどを装着して走るようになってきた。
たとえ全く、人影がないような場所であっても、だ。
もともとのきっかけは、山中教授がYouTubeで発信した、このメッセージだろう。
教授は「ジョギングをしている際に大きな息をすると、咳やくしゃみと同じような状況になっている」と話し、だからこそ、マスクやバフが必要だと説いている。
ジョギング時、咳やくしゃみをしているような人と同じような状態になるのであれば、確かに、マスクなどをしていた方が、今の時世、エチケットとしては正しいのかもしれない。
ただそれは、あくまで、「周囲に人がいる」時だけ気を遣えばいいだけの話だ。
しかし現状は、ランニング時は《常にマスクやバフをするべき》的な雰囲気になってしまっていると思う。
教授は、自身のWebサイトにおいて、「走る時は、10メートルくらい離れないと感染の危険があるという報告もあります。」という情報も発信。
教授としては、「そういった情報もある」という紹介に過ぎなかったのかもしれないが、テレビ局では、そうは捉えなかった。
教授の発信したYouTube動画の内容と結びつけ、《ランナーは、菌をまき散らして走っている》《10m以内に近づくと危険》などというイメージで拡散。
ランナーに対して、マスクやバフを強要するような報道を行ったのだ。
メディアの影響もあり、前述のYouTube動画は、すでに30万回以上再生されている。
結果、「ジョギング時には、常にマスクやバフをして走るべき」というムードを作り出してしまった。
しかし…。それは本当に正しいのだろうか。
現状、山中教授のWebサイトにある「ジョギングエチケット」の項目では、赤字で以下のように追記されている。
前述のYouTube動画についても、以下の文章が動画の解説部分に追記されている。
この提案は、休日の皇居や大阪城など、多数のランナーや散歩をされる方が集中する場所を念頭に置いています。人がまばらな時のジョギングや、グランドでの屋外スポーツに関する提案ではありません。
周囲にたくさん散歩の方がおられる時は、エチケットととしてマスク等を着用することにより、お互いに気持ち良い時間を過ごすことが出来ると思います。夏用の涼しい製品も販売されています。
しかし…。もう遅い。
現状は、テレビを見た人たちに、《ランナーは菌をまき散らして走っている》《10m以内に近づくと危険》という情報だけがインプットされており、それが一人歩きしてしまっているからだ。
僕は、ランナーとしての山中教授を尊敬しているが、今回の件に関しては、少し言葉足らずだったのではないかという気がしている。
教授の発言は、自身が思っている以上に影響力が強く、結果、テレビ局に都合良く利用されてしまったため、厄介な状況になった。
テレビの情報を鵜呑みにしてしまっている人たちは、あらためて、教授のWebサイトを確認しにいくとは思えないし、YouTube動画の解説を読み直したりしない。
またテレビにおいて、加筆部分をあらためて伝えてくれる可能性は皆無だろう。
だから僕は、山中教授に心から伝えたい。
この点については、追記などと言う方法ではなく、動画を修正アップロードするか、あらためて動画で発表してもらいたいと。
たとえそれでも、テレビが修正報道してくれるかは、微妙なところなのだけれど…。