(承前)
イベントの後半は、筒井先生が自作を朗読してくださる企画が組まれていた。
朗読作品は、2006年に、文藝春秋から刊行された短編集「壊れかた指南」収録の…。
「鬼仏交替」だった。
この日、先生は、「壊れかた指南」の単行本を手に持って登壇。朗読の時間になると、本を開いて、「鬼仏交替」を読み上げ始められた。
その情景を見て、僕は熱い思い出がこみ上げて来た。そう、これは、今から3年数ヶ月前の秋。2010年11月のイベントで、先生が自作朗読して下さった作品だからだ。
当時の印象を、僕はこう書き綴っている。
みたび、筒井さんが登場される。待ちに待った朗読コーナーだ。朗読は、あの時で最後というお話もあったので、本当に嬉しかった。読まれた本は、「壊れかた指南」(文藝春秋刊)収録の「鬼仏交替」。
いやはや、これが何とも、本当に面白かった。筒井さんの小説を他ならぬ筒井さんが朗読されるのだから、面白いに決まっているのだけれど、想像を超える至高の瞬間だった。途中、グラスが割れるアクシデントがあるほどの大熱演。爆笑の嵐。
一生忘れられない「現代語裏辞典ライブ」の夜 - 言い捨ての小部屋:
あの日の朗読は本当に面白かったので、それを再び聴けるというのは、本当に嬉しかった。
そして、今回もまた、最高だった。ストーリーの面白さは言うまでもないが、それを伝える声色、抑揚、間。何もかもが文句なし。僕は、今回も、その世界に酔いしれまくった。
この日、会場に集まっていたのは、ディープなツツイストばかりだった筈だから、皆、この作品の筋は掌握しきっている筈なのに、爆笑に次ぐ爆笑。
その理由は、作品の素晴らしさに加えて、朗読ならではの魅力が大いに加えられていたからに他ならないだろう。
僕の持っている「壊れかた指南」はサイン本。これにも実は深い思い出がある。
いざ、筒井さんに相対すると、緊張のあまり言葉が出なくなってしまった。以前のサイン会同様、筒井さんが「いらっしゃい」と微笑む。とたんに緊張。僕の本に、毛筆でサインをしていただいている間も、僕はずっと緊張している。しかしそれは心地良い緊張だ。何とも言い表せないほど、至福の時間だった。
『壊れかた指南』刊行記念:筒井康隆氏サイン会 - 言い捨ての小部屋:
今から8年前。この本の発売記念サイン会に出席した時のエントリーだ。
まさか、その後、数々のさまざまなイベント関連に参加させていただき、なおかつ、先生から直接お話を伺える機会がくるなんて、夢にも思っていなかった。だから、僕は本当に幸せなツツイストだ。
今回の刊行記念イベントは、朗読の終了とともにフィナーレとなったが、僕には、さらなる至福が待っていた。
(以下、続く。)
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