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イントゥ・ザ・ワイルド

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圧巻。
ラストシーンで、僕は呆然として声を失った。なんという素晴らしい映画なんだ、これは。暗くて重たい、悲劇的な結末であるにも関わらず、こんなに心に響くのはなぜだろう。
2時間28分という長尺だったことも忘れ、僕はただただスクリーンに見入っていた。
既に9月から封切られている映画であり、現在は、かなり上映館も限られているから、今更レビューしても時期遅れなのだとは思う。それでも僕は書かずにいられない。この映画はとにかく素晴らしいと。
DVDが出たら勿論買うつもりだけれど、上映が終了してしまわないうちに、もう1度映画館で見てみようかとも思っている。
映画『イントゥ・ザ・ワイルド』-オフィシャルサイト
以下、ネタバレあり。御注意。*1
正直に言うと、最初はのめり込めなかった。
主人公である若者クリスが、いきなり、ストーリーの最終地点のアラスカに、ヒッチハイクで辿り着く。この展開が何だか唐突に思えて、すぐには感情移入できなかったのだ。バックパックを背負った若者が、アラスカの雪原を歩いていくシーンが、何だか嘘くさく、作り物っぽくも感じた。
この映画は、実話に基づいたものだとわかっていても、なんだか空々しさが残った。いったいこのあとどうするんだ、どうやって結末をつけるんだ。そもそもなぜアラスカなんだ。様々な疑問が渦巻いた。
雪原の中に1台の廃バスが残されており、その中で生活を始めた時も、なんだかご都合主義的に思えた。
しかし、僕が違和感を感じたのはここまでだった。このあとはぐいぐい引き込まれて、結末に至るまで、息を呑み続けていたのである。
ストーリーは、廃バス生活の情景から、いきなり2年前に戻る。主人公の大学卒業シーンだ。両親、妹と過ごす卒業後の食事会。一見楽しそうなシーンだけれど、それは全くの偽りで、クリスと両親の言葉は、全く噛みあわないままだった…。
ここからは、映画の展開が二重構造になる。卒業を機に、全てを捨てて旅を始めるクリス。アラスカの廃バスで過ごすクリス。2つの時制が絡み合いながらストーリーは進行していく。
クリスがアラスカに辿り着くまでのエピソードは、章仕立てになっていて、それぞれの章ごとに素晴らしい仲間たちとの出会いが繰り広げられる。旅のさなか、次々現れるアメリカの雄大な大地のシーンは、どれもこれもが印象的だ。途中、主人公が大都会に戻って感じる寂寥感も申し分ない。なぜ、クリスが旅に出たのか、苦悩の理由が何だったかということは、随時織り込まれる妹の回想で明らかになる。この構成が実に巧い。
それぞれの物語は、ひとつひとつが実に輝いていて語りきれないが、最終章に現れる老人、ロン・フランツとのエピソードが秀抜。短い共同生活の間、語り合い、心を許しあったクリスを送る車の中で、養父にまでなろうと申し出たロン・フランツ。しかし、それでも揺るがなかったクリスの心。別れのシーンでは思わず泣きそうになった。
過去へのフラッシュバックを繰り返しながら、クリスのアラスカ生活もサバイバルを極めていく。最初は嘘くさく思えた、アラスカの荒野における生活も、全く自然に、手に取れるようにクリスの思いが伝わってくるようになった。
そして…。
やせ細って憔悴しきった(とても2年前と同一人物とは思えない!)状態になったクリスの姿には、目を疑うとともに、ただただ、息を呑みながら、僕はその一挙手一投足を見つめていた。
最後の最後、廃バスの中で、クリスが綴った言葉*2が胸を打つ。おそらく、僕の一生忘れられない言葉になるだろう。

YouTube - 映画『イントゥ・ザ・ワイルド』予告編

*1:ネタが割れていても十分堪能できる映画ではあるけれど、予備知識のない方が、より楽しめると思う。

*2:「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合った時だ。」


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