緊急事態宣言が発効したのは、4月8日の午前0時。
その数時間後…。
僕は、無駄に早く目覚めてしまったため、家を出て走り始めた。
緊急事態宣言で、さまざまな活動が自粛要請されることになったが、「健康維持目的でのジョギング」は認められている。
ということで、僕は、健康維持を目的に夜明けの街に繰り出した。
道を歩いている人は殆どいない。
もともと、夜明け前の時間は人通りが少ないのだけれど、ターミナル駅の近辺などでは、朝まで飲んでいる人たちで賑わっていたりする。
しかし、この日は、そういった情景も殆ど見られなかった。
午前5時。神田神保町交差点。
赤く染まってきた空。ビル越しに見えるスカイツリー。
それを見ながら、僕は、急がなければ…と思った。
ここまで僕は、ゆったりのんびりロードランをしてきたが、早くしないと、夜が明けてしまうからだ。
この日、僕が目指していたのは、皇居。
僕は、半蔵門から眺める夜明けの情景が大好きなので、何とか夜明け前に着きたいと思った。
ということで、やおら足を速めて、平川門の交差点に到着。
すると…。
門の背景に、月が大きく輝いていた。
とても大きく、しかも、赤い月。
そう。
この日は、今年1番大きな満月である、スーパームーンの日だったのだ。
後で調べたところ、8日の「月の入り」は5:31だったので、ぎりぎり間に合った計算。
あと10分遅かったら、僕は、皇居でスーパームーンを見ることができなかったことになる。
悲しいかな、今、コンデジの調子が悪く、これ以上ズームすることはできなかったが、でも、記録にとどめることができたのは、とても嬉しかった。
竹橋を昇っていく。
皇居外周の中では、一番きつい上り坂。
といってもたいした傾斜ではないし、桜の木々にも癒やされ、僕はとても気分が良かった。
何より、「歩道に誰もいない」というのが、素晴らしい。
新型コロナウイルスに伴う集団感染を防ぐ対策として、《三密を避ける》と言うことが言われている。
三密とは、「密閉」「密集」「密接」のこと。
皇居外周ランは、もちろん「密閉」ではないが、残りの2つについては、微妙なところがある。
ランナーが集中する夕暮れ時などは、当然「密集」するし、友人と走れば、「密接」な会話も生じるからだ。
しかし、夜明けの時間にひとりで走れば、そういった問題はゼロ。
「密集」とも「密接」とも無縁。《密》とかけ離れた、極上の《非密》ランが堪能できるのである。
いやはや、素晴らしいではないか。
僕は、そんな喜びを噛みしめながら、竹橋を駆け上り、千鳥ヶ淵を抜けて…。
半蔵門に到着。
何とか夜明けの時間に間に合い、素敵な情景を眺めることができた。感激だ。
ここから先は、しばらく下り坂になるので、短く感じるというのも素晴らしい。
桜田門を抜けて、二重橋方面を眺める。
ここもガラガラ。
やっぱり《ひみつ》のランは最高だ。
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