餃子ランナーは電子機器の夢を見るか?

ランと餃子とデジタルガジェット。ときどき、映画や雑誌の話。言いたいことを言い捨てるブログ。

ランと餃子とデジタルガジェット。ときどき、映画や将棋の話。言いたいことを言い捨てるブログ。

スポンサーリンク

ブラインドネス

スポンサーリンク


映画館で、見て良かった。
ロードショーを見送って、DVDで見ることにしていたら、あまりの息苦しさに途中で投げ出していたかもしれないからだ。何とか我慢して見られたとしても、途中で気も漫ろになってしまっていた可能性は高い。
それほどまでに、中盤の病棟(感染者隔離収容所)シーンは憂鬱だった。流石に席を立つほどの不快感ではなかったけれど、これでもかと云わんばかりの、醜い人間の業を見せつけられ、僕はかなり萎えてしまった。内容を考えると、PG-12指定*1では甘すぎるぐらいだと思う。
とはいえ。
ラスト30分ぐらいから急展開したストーリーで、その息苦しさは解消される。
《全世界、失明。》という衝撃のキャッチコピーは、この後半で俄然重たい意味を持ち、胸に突き刺さる。あの病棟部分を乗り越えたからこそ、後半が生きるようにも思えた。あとで振り返ってみれば、病棟部分を含め、全体の作り込みは素晴らしく、完成度の高い映画だと思う。
恋人同士や親子連れで気軽に楽しむという類の映画ではないので、誰にでも推奨できるものではないけれど、重たい人間ドラマを苦にしない人にはお勧め。
映画 『ブラインドネス』 公式サイト
以下は、蛇足のネタバレ感想なので、これから観賞予定の方は、スルー推奨。
この映画を見ている途中で、僕が納得できなかったのは、「全世界、失明」などという派手派手しいコピーをつけた映画であるにも関わらず、延々と、病棟内での暴力シーンやレイプシーン*2が続いたからだ。こんな「コップの中の水」サスペンスを見たかったわけじゃない、という違和感が拭えなかった。こんなもので「全世界、失明」なんて、大袈裟すぎるだろ、と思ったのだ。
しかし、終盤。たった1人だけ目が見えるヒロインの活躍と、収容所の火事などにより、《外の世界》へ脱出できて以降、僕の違和感は一気に吹っ飛んだ。
完全に廃墟と化した街。もはや電気も水道もない。スーパーマーケットなどは荒らされまくり。思えば、それまでは監視兵たちに撃ち殺されていた患者たちが簡単に収容所を脱出できたのも、誰もかれもが失明してしまったからだったのだ。
政治家や軍隊に至るまで失明してしまえば、もはや誰も強制収容などできはしないし、もちろん監視さえも無意味になる。それを知った時、僕は背筋が寒くなった。中盤は確かに、「コップの中の水」だったのだけれど、外の大海は、もっと凄まじい修羅場になっていたに違いないからだ。
廃墟となった街に降る雨で、誰も彼もが快哉を叫んでいたシーンは忘れられない。誰もが抱き合い、喜び、天から降ってくるシャワーを享受していた。何も見えなくなった世界だからこそ、汚れと飢えをともに癒してくれる「雨」という確かな恵みが、嬉しかったのだと思う。
結末は、大いなる救いがある。Webでの評判では「甘すぎる」という声もあるようだけれど、僕は少しほっとした。

【参考】YouTubeにあがっている予告編。
ただし、内容的にはちょっといただけない*3ので、公式サイトにあるムービーの方がおすすめ。

*1:12歳未満保護者同伴

*2:正確に言うとレイプではないが、食料の「対価」として性行為を強要されているので、同じようなもの。

*3:この映画の重要な核となる、収容所シーンが殆ど紹介されていないため。


マラソン・ジョギングランキングへ