先週末に鑑賞。
ずっと、日本での公開を待ち侘びていた映画だった。
今回は、前売り券であるムビチケカード(メッセージカード特典つき)も購入したほど。
だから、本当に公開の日を楽しみにしていたのだ。
この映画の原作である「あなたの人生の物語」は、SFファンなら知らない人がいない、と言われるほど、傑作中の傑作。
2000年のネビュラ賞受賞作であるばかりでなく、日本でも、各種オールタイムベストSFの1位に輝く作品なのだ。
その意味でも、SFファン(の端くれ)の僕は、見に行かずにはいられなかった。
僕がこの作品を読んだのは、もう十数年前のこと。
この作品は、同題の短編集に収録されており、100ページあまりの中編なので、復習するのは簡単。
その「アイデア」と「凄さ」は、今でも脳裏に焼きついているけれど、細かいところまでは覚えていなかったので、今回、映画鑑賞前に再読するつもりだった。
過去の記憶が正しければ、どうにも映画化しにくい作品であるように感じたし、原作を超えるイマジネーションが、映像で味わえるとは考えられなかった。
が、僕は、それでいいと思った。
原作の感動に再び酔いしれて、映画では、それがどのように表現されているのかを楽しむつもりだった。
テッド・チャンの作品は、この作品に限らず、どれもこれも素晴らしかった記憶があるので、SFマガジンの個人作家特集も合わせて、じっくりと研究してから臨もうと思っていた…のだけれど。
例によって、ズボラな生活を送っていたため、たった100ページの作品を読む時間をとれないまま、映画の鑑賞日時になってしまった。
週末前に読み直そうと思いつつ、結局、週末に突入。
先週末は、休日出勤や帰省なども控えていて、土曜朝の上映回しか見られそうになかったため、その時間で座席予約していたからだ。
…結果。
僕は、むしろ「再読せずに見た」ことが正解だったんじゃないかと思えている。
原作の細かい内容に捉われず、その醍醐味を味わうことができたからである。
映画は、原作のアイデアやエッセンスを尊重しながら、映像ならではの「見せ方」にこだわり、大きくストーリーを改変している。
特に、クライマックスの息詰まる展開は、全く原作になく、映画ならではのスリリングさをもって、胸に迫ってくる。
これは素晴らしい。素晴らしすぎる。
本格的なSF作品としては、「2001年宇宙の旅」「未知との遭遇」クラスの、後生に残る映画だと思う。
SF好き、特に、ファーストコンタクトテーマが好きな人であれば、絶対に見ておいて損はない。
今年のオスカーでは、音響編集賞の1部門受賞にとどまったけれど、作品賞や、監督賞、脚色賞などにもノミネートされており、そのどれを受賞してもおかしくないほどの作品。
僕は、昨日、ようやく原作を読み直したのだけれど、これは「映画を見るために」先に読んでおく作品ではない、と実感した。
もちろん、圧倒的に素晴らしいSF作品なので、SFファンとして、この作品目当てに読むのであれば、期待に応えてくれる筈だ。
しかし、「映画の予習用」として、読むべきものではない。
その内容は、ベタベタな本格SFであり、小説としては珍しい二人称形式をとっている(それがまさに、この小説の大きな鍵でもあるのだけれど。)ため、ちょっとわかりにくいと感じるかもしれない。
そのため、SF作品に慣れていない読者だと、もしかすると、途中で挫折してしまう可能性もある。
もしもそれで挫折し、映画鑑賞をやめてしまったら、あまりにも、あまりにも、もったいないと思うからだ。
この名作の根幹となるストーリーを知らずに、映画に臨めば…。
ラストシーン。そのストーリーの全てが繋がる、あっと驚く展開、そして、押し寄せる余韻の波に酔いしれることができる。
それは、まさに、「原作予習をしなかった」人だけが味わえる最高の至福だ。
だから、もしもこの映画が気になっているのであれば、原作未読にこだわらず、いや、むしろ、原作未読ならば、その幸せを噛みしめて、スクリーンの感動を味わって欲しいと思う。
映画を見終わった後、原作を読むと…ストーリーが捉えやすく、また、別の角度から味わえて、これもまた、大きな至福に繋がる。
映画も、そして、原作も、超オススメだ。
パンフレットも、もちろん購入。
ちょっと凝った作りだし、写真も裏話も豊富なので、映画に感動したなら買っておく価値はある。
邦題の「メッセージ」は、ちょっと地味だなぁ…と思ったのだけれど、映画を見終わった後は、そのストーリーに合った、素晴らしいタイトルだなぁと思っている。
少なくとも、映画の原題である「Arrival」よりは断然いい。
原作小説のタイトルは、「あなたの人生の物語」で、これは、まさに原作の内容を表した最高のネーミングだったのだけれど、この映画に関しては、「メッセージ」の方が合っていると思う。
前売特典のカードは、開くと飛び出す仕掛けになっている。
映画を見終わった後に開いてみると、鑑賞時の感動、余韻が甦ってきた。
いやぁ、本当に素晴らしい映画だったなぁ。
- 作者: テッド・チャン,公手成幸,浅倉久志,古沢嘉通,嶋田洋一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/09/30
- メディア: 文庫
- 購入: 40人 クリック: 509回
- この商品を含むブログ (388件) を見る