一味玲玲のNJC餃子祭りでは、さまざまな話題で盛り上がった。
僕にしてはかなり飲み過ぎたため、思い出せないこともあるのだけれど、ひとつ、強烈な印象を残した話題があった。
怪我の話題だ。
ラン仲間が、「メチャメチャ痛いけど、とっても効く」という、鍼(はり)治療院の話をしていて、僕は、それが忘れられなかった。
僕は、これまでの人生で、鍼は未体験だったし、痛みについての耐性もないので、元気な時だったら、笑ってスルーしていたかもしれない。
しかし、今は、違う。
数ヶ月前から座骨神経痛に苦しんでいて、整形外科やリハビリでの治療も行き詰まっている。
思うように走れない毎日で、悩み、苦しむ日々だったから、わらにも縋る思いがあった。
ということで…宴からの帰宅早々、朦朧とした頭で、店舗のWebサイトを開いて、予約メールフォーム記入に臨んでいた。
フォームには、「競技種目/希望日時/紹介者/症状」などを書く欄があり、少し変わっているなぁと思った記憶がある。
僕は、競技というにはおこがましいのだけれど、一応、競技種目欄に「ランニング」と記入。紹介者欄にラン仲間の名前、症状欄には、座骨神経痛の状況を書いて送信。その後すぐ、深い眠りに落ちた。
翌朝目覚めると、幸運にも、当日の昼が空いているという返信をいただいたので、すぐに折り返し、その時間を予約。
数時間後には、店の前に佇んでいた。
訪問前に、Webで、受診者の体験レポートなどを流し読みしていると、とにかく「痛い」のオンパレードということで、僕は、かなりびびっていた。
しかし、それとともに、「とっても効いた!」という報告がセットになっていたので、大いに期待して扉を開いた。
治療院は2Fにあったので、階段を上っていくと…。
いきなり、ナンバーカードやメダル、トロフィーなどに遭遇。
廊下には、藤原新選手のオタワマラソン優勝時ポスターがあった。
少し進んで待合室へ。
通常、治療院の待合室というと、椅子と週刊誌などだけが用意された、殺風景なところが多いと思うのだけれど、ここは全く違っていた。
とりわけ、すぐに僕の目を惹いたのは…。
WMM(World Marathon Measure)各大会のメダルと、6STARS フィニッシャーの6連メダルだった。
おぉぉ!と、僕は思わず声を上げそうになってしまったほど。
その前夜、WMMの話題で盛り上がったばかりだったから、感動はひとしおだ。
待合室には、名だたるランナーたちの色紙も沢山飾られていた。
とりわけ、僕が敬服している鏑木毅選手の色紙と、その言葉「楽しむ勇気を!」には、大きく心を動かされた。
待合室内には、ランニング雑誌類も一通り揃っていたし、ラン関係のグッズなども販売されていた。
まさに、「ランナー色満載」の治療院だったのだ。
そんな待合室の状況に驚いていると、ほどなく、僕の名前が呼ばれた。治療開始の時間だ。
僕は、やがて訪れる筈の猛烈な痛みに備えて、覚悟を決めた。
まずは、施術いただく先生に、症状を説明。
その際、ランニング歴やタイム、出走してきたレースなども問われたので、一通り話をさせていただいた。
先生は、僕の話を非常に興味深く聞いてくださったあと、鍼治療にとりかかりますと宣言した。
治療の間も、話はランニングのことばかり。
先生自身もランナーであり、また、この治療院がランニングチーム(各種大会での優勝、入賞多数!)と関わっていると言うことで、まさに、ランナーのための治療院、と言う印象を受けた。
それだけではない。
僕と同時刻には、カーテンを隔てて何人もの患者が治療を受けていたが、そこから聞こえてくる話も、ランニングのことばかりだった。
しかも、その話題がハンパじゃない。
「最近、キロ3分で走れなくなってきた」(!)とか、どこかのレースで入賞したとか、もの凄い話が飛び交っている。
いやはや、「本当にここは、治療が必要な人の場所なのだろうか?」と思うほど、レベルの高い話だった。
しかし…。
そんな話を聞きながら、僕は、「あぁ、ここに来て良かった」という思いで満たされていた。
施術を行う先生も、患者も、ランナーだらけの治療院。
だからこそ、僕のつらさ、苦しみも十分理解してくれる筈だし、回復に向けての実例も多い筈だからだ。
と。
僕にとって、人生初体験になる、鍼の痛みはどうだったのかと言うと…。
これが、意外にもそんなに痛くなかった。
ラン仲間からの脅しで、相当、恐怖のハードルを上げていたこともあるが、それに加えて、鍼を打つ場所が腰周りだったことが幸いしたようだ。
先生の話でも「腰は、痛みを感じにくい場所なんです」との話だった。
実際、腰を少し離れて、腿などに打った時は、結構痛みを感じたので、きっと、下肢に近づいていくほど痛くなっていくのだろう。*1
1時間の治療が終わった。
これで回復…という印象はなかったが、それは想定内。
治療中、先生から、僕の座骨周りは、相当固まってしまっていて、回復には、数回の治療が必要と言われていたからだ。
僕は、再訪を心に決めて、院を出た。
これまで数ヶ月、どうにも先が見えないリハビリを続けてきたが、ひと筋の光明が見えてきた。
…と、信じたい。
*1:Webでの激痛レポートや、ラン仲間の話でも、最も痛いのは、「足の裏」とのことだった。