これぞまさに、餃子専門店の趣だ。
赤一色に彩られた店頭。輝く餃子の文字。
店名である「祥雲」と「餃子」以外には、殆ど情報がない。しかし、それがこの店の矜持なのだろう。
餃子に対する、並々ならぬ自信を感じさせる店だ。
僕にとっては、念願の訪店だった。
これまで神戸を訪れた際は、諸々の事情で、行くことができなかったからである。
その夢が、ようやく叶って、最高に嬉しかった。
ただ、この日の僕は、新神戸を19時頃に出る新幹線で帰る必要があったため、あまり余裕がなかった。
駅までの移動時間やお土産を買う時間を考慮すると、発車1時間前には店を出る必要がある。
そのため僕は、店の開店時間である17時前から並んで待機。
そして、灯りがつくや否や、つけられたばかりの暖簾をくぐって、入店した。
一番乗りだ。
店内は、カウンターのみで10席程度。
開店後20分も経つと、全ての席が埋まってしまい、行列もできていたようなので、早くから待っていたのは正解だった。
着席。
壁のメニューを眺めてみる。
餃子類は、350円。リーズナブルで嬉しい。
メニューの上に、「お一人様2人前から」と書かれていたので、あまり種類が頼めないかも…と、僕は一瞬躊躇した。
しかし、「2人前以上であれば、餃子の種類は問わない」ということがわかり、安心。
僕は、どれにしようか迷ったが、まずは、大好きな具である「ニラ玉」の餃子と、「にんにく」餃子を注文した。
厨房は、マスターひとりで取り仕切っており、注文を受け、餃子を焼き、その間にも、新しい餃子を包み続けていた。
メニューを絞っているとはいえ、その流れは淀みなく、見事。
注文した餃子が焼き上がるのを待つ間は、もちろん…。
ビールを注文。
しっかりと冷えたそれは、疲れた僕の喉に染み渡った。
僕は、ザーサイをアテにビールを堪能し、厨房を眺めていると、やがて、ジリジリとした音が聞こえてきて…。
餃子がやってきた!
こんがりとした焼き色から、カリカリ感が伝わってきて、僕は、少し興奮した。
iPhone SEと比べてみた。
餃子はそれほど大きなサイズではないけれど、神戸一口餃子とも違う。
神戸餃子と言えば《味噌だれ》が有名で、この店にもそれは置いてあった。
が、餃子が出てくるのを待っている間、眺めていた壁に…
このように書かれていたので、僕はそれに従うことにした。
具の味付けに自信があるからこその、セリフだと思う。
僕は大いに期待して、まずはニラ玉餃子から食べてみることにした。
おぉ、旨い。旨いぞ!
オーソドックスでありながら、実に味わい深かった。ニラ玉だけじゃなく、挽肉も入っており、それが実にいい仕事をしている。
僕がこれまで食べてきたニラ玉餃子の中でも、かなりレベルが高いと思った。
具にはしっかり味がついており、確かに、何もつけなくても十分美味しい。むしろ、つけると邪魔になる。
それは、この後出てきた全ての餃子でも同様。僕は結局、この日、何もつけずに全ての餃子を味わった。
具の美味しさもさることながら、それ以上に感動したのが、「皮」のサクサク、カリカリ感。
非常に軽い食感なのに、頼りない感じではなく、絶妙。そしてそれが、具の美味しさも引き立てている。
いやぁ、これは最高の皮、そして焼き方だ。
続いて食べたニンニクが、これまた凄かった。
非常にパンチが効いており、ニンニク好きにはたまらない餃子だ。そして、これはビールが進む味でもある。
僕は、ここでビールを追加注文。もちろん、餃子も追加することにした。
焼き上がりまでの時間や、帰りの列車時刻なども考慮すると、あと1回の注文が限界。ここは慎重なセレクトが必要だ。
ということで、あらためてメニューを眺め、しばし迷った結果、「キャベツ餃子」と「しいたけ餃子」に決定。
僕は、ニラ玉とニンニクの味わいに酔いしれながら、新たな餃子が出てくるのを待った。
20分程度経った頃、追加餃子二種が僕の目の前に登場。
僕は、まず、キャベツ餃子から食べてみることにした。
キャベツは、オーソドックスな餃子の具だから、その店の「餃子力」を図ることができるからだ。
この店独特の《軽ウマ》皮と、キャベツの相性はどうだろう?と思いながら、囓ってみる。
途端、僕の口内が、サクサクした皮の味わいと、キャベツの甘みで満たされた。
オーソドックスでありながら、でも、普通じゃない美味しさ。
やっぱりこの店の餃子はレベルが高い!と、僕は思った。
そして。
この日、僕にとってラストとなった、椎茸餃子に進む。
僕は、これまでの餃子三種で大いに感動していたから、味に対してのハードルはかなり上がっていた筈。
しかし、そんな状況で囓ったにも関わらず、僕は、思わずこう叫びたくなってしまった。
絶品!
いやぁ、これは、旨い。凄い。なんという食感、なんという味。
僕は感動が止まらなかった。
椎茸、豚肉、春雨、キクラゲの四種の具が、見事なハーモニーで紡がれている。
そして、それを包む皮がやっぱり最高。その《軽さ》が、具の味わいを最大限に引き出しているのだ。
いやぁ、ほんと、美味しかったなぁ。
僕は思わずこれを追加注文したくなってしまったほどだ。
ただ、この日は残念ながら時間切れ。
僕は、感動に酔いしれながら、後ろ髪を引かれる思いで帰京した。
この店では、まだ食べていない餃子が何種類かあるし、そして、何よりまた、この椎茸餃子が食べたい。
神戸マラソンは、どうせまた当たらないので(もう決めつけているw)この店に行くために、神戸まで出かけようかと思っている。