僕が人生で初めて読んだSFは、星新一先生のショートショートだった。
確か、新潮文庫の「ボッコちゃん」だったと思う。
一篇一篇がとても短い上に、驚異的に読みやすく、かつ、とんでもない切れ味の結末。
子どもながら、大きな衝撃を受けたことを思い出す。
あっという間に読み終えてしまい、当時刊行されていた文庫本を買いあさり、読みふけった。
その後僕は、SFの沼にハマり、筒井康隆先生の作品に出会ってからは、数十年来、追いかけ続けている。
しかし、僕にとってのSFの原点は、間違いなく星新一先生のショートショートだ。
僕の家には、その当時から読みふけっていた文庫たちが今でも沢山残っている。
今回、この写真を撮るために慌ててまとめて並べ直したが、既にカバーがなくなっていたりするものも多数。
もう何十年も繰り返し読み続けてきたんだもんなぁ。仕方ない。
いくつかの本は買い直しているけれど、これはこれで味がある(ホントか?)ので、悪くない気もしている。
実家に置いてきてしまっている本もあるため、機会を見てきちんと整理をしておきたいと思う。
今回、そんなことをふと思ったのは、今週この本が刊行されたからだ。
昨今、ショートショート集というだけなら、それほど珍しくないけれど、この本は特別だ。
星新一先生の生誕100周年記念本として企画され、日本SF作家クラブが編集し、早川書房から刊行された。
練りに練られ、厳選された粒ぞろいの50篇が収められた本なのである。
収録作品のラインナップは、実に壮観。
・筒井康隆「楽天ボウル」
・梶尾真治「ユミと私の宇宙論」
・新井素子「花粉症事始め」
・高井 信「豆か虫か」
・藤井青銅「ト〇〇○〇の日」
・江坂 遊「手つなぎ鉄道心中」
・太田忠司「襖の向こう」
・菅 浩江「亜麻色のインヘリタンス」
・草上 仁「振込詐欺」
・傳田光洋「六畳の星座」
・深田 亨「猫笑いの夜」
・井上雅彦「竜の高み」
・安土 萌「ガイコツのいる美容室」
・斎藤 肇「視線」
・奥田哲也「鈍色にびいろの荒野」
・田中哲弥「森の中」
・藤井 俊「ショートショート★トーナメント」
・矢崎存美「心の声」
・法月綸太郎「寿限無じゆげむ対反魂香はんごんこう」
・北原尚彦「希少天使保護実験」
・北野勇作「亀たち」
・高野史緒「ささやかな神」
・林 譲治「天狗党」
・小川一水「内銀河調停局一〇八号」
・円城 塔「初等魔術教本断片modulo3」
・伊野隆之「南へと歩く」
・松崎有理「海の価値」
・宮内悠介「衝突」
・高山羽根子「JBのシンドン」
・坂永雄一「天動説の発見」
・酉島伝法「予鳥」
・オキシタケヒコ「蝕」
・倉田タカシ「脳、または石」
・山本浩貴(いぬのせなか座)「偏秒」
・久永実木彦「帳尻が合う」
・赤野工作「/*ナイジェルによる引継書*/」
・日高トモキチ「ながいながい鼻のはなし」
・関元 聡「冥王星行き貨物船」
・鵜川龍史「閉域観測」
・坂崎かおる「雪のかれら」
・溝渕久美子「環と線と」
・青島もうじき「鳥はさやかに」
・葦沢かもめ「SOUL.md」
・稲田一声「二・七八秒の針」
・犬怪寅日子「Myxogastria」
・灰谷 魚「スイミングプールの底には魂が沈んでいる」
・大澤博隆「配慮の衝突」
・三宅陽一郎「ねごとラーニング」
・岡和田晃「十四カトルセ」
・岡田 悠「鳥取空港 手荷物受取所」【6/18(木)発売】星新一生誕100年記念、日本SF作家クラブ編の書き下ろしアンソロジー『ショートショートなSF』収録作発表!|Hayakawa Books & Magazines(β)
何と言っても、筒井康隆先生の名前があるのが嬉しい。
星新一先生の盟友、筒井康隆先生の新作が収録されている!
それだけで、この本を買う価値があると言えるほどだ。
もちろん、筒井先生のみならず、ベテランから新鋭まで多彩で豪華な顔ぶれが並び、作家名や作品名を見ているだけでも嬉しくなってしまう。
僕は、ショートショートが大好きなので、これはもう極上のお宝本だ。
「星新一ショートショートコンテスト」ゆかりの作家たちが、多数参加しているのも、記念本にふさわしい。
星新一ショートショートコンテストは、1979年~1983年に開催されていた。
その名の通り、星先生が審査委員長を務められていた、ショートショート限定のコンテストだ。
受賞・入賞作品は文庫でまとめられている。
星先生の精緻な選評も含めて、ショートショートの「粋」が詰まった本と言える。

当時は、ショートショートがブームとなっていて、こんな雑誌まで刊行されていた。

ショートショートランド。
珠玉の掌編がたっぷり詰まった、日本ではじめてのショートショート専門誌だ。
この雑誌は、幅広いジャンルの作家たちが参加していて、SFに限らず、ミステリー系の作品も多数掲載されていた。
SFショートショートに特化した、こんな雑誌も刊行されていた。

当時の俊英だった若手作家たちを中心として、インタビューや対談企画なども載っているSF雑誌だが、掲載作品は、みなショートショートだった。

文庫サイズのこんなショートショート集も定期刊行されていた。
いやはや、ほんとに懐かしくて、素敵な時代だったなぁ。
今回、満を持して刊行された「ショートショートなSF」のおかげで、あの頃のドキドキまでよみがえってきた。嬉しい。
ショートショートは、やっぱり最高だ。



