僕が東海林さだお先生の文章に初めて触れたのは、数十年前。
「週刊朝日」の連載エッセイ「あれも食いたいこれも食いたい」だった。
軽妙洒脱な文体で、ユーモアたっぷりに語られる《食》エッセイが、面白すぎてたまらず、毎週本当に楽しみにしていた。
その連載をまとめた《丸かじり》シリーズの新刊が出るたびに買ったし、僕が読み始める前の連載分も買い揃えたことを思い出す。
食べ物の話だけじゃない。
旅行記やチャレンジ企画、日常への疑問や青春時代の回想録に至るまで、何を書いても本当に面白かった。
難しい用語は一切使わず、誰にでもわかる文章で、かつ、構成力も抜群なので、読み心地がたまらなくいい。
随所に盛り込まれるイラストも、《漫画家》東海林先生らしいタッチで最高。
時に強い主張をされることもあるのだけれど、独特の柔らかな文体で、かつ自虐を交えて書き綴るので、何を書いても不快にならない。
唯一無二の《天才》エッセイストだったと思う。
落ち込んだ時、先生のエッセイを読んで心を和ませてもらったことは数知れない。
僕は、すべての本を買ってきたわけではないけれど、本棚に並べた先生のエッセイ群は、これまで何度も何度も読み返している。

いつでもどこでも気軽に持ち歩けて、珠玉のエッセイを何度も読み返せる文庫本は僕の大事な宝物だ。
10年前、そんな先生がガンにかかられてしまった時は、大きなショックを受けたけれど、入院時のできごとさえも、いつものトーンで綴っておられた。
流石というしかないし、退院後は全く普通に復活をされていて、やはり東海林さだお先生は凄い!と感服していたのである。
だから。
先週、その訃報を知った時は本当に驚いた。
先生は、まだまだ食べ続け、書き続けてくださると思っていたので、心にぽっかりと穴があいた気分だ。
この週末は、そんな先生の本を、どれもこれも読み返したくなり、1冊に絞りきれなかったので、《集大成》とも言えるこの本を読んでいる。
単行本は2段組で800ページ、文庫本に至っては1,341ページ(!)にもなる、超ウルトラ「東海林さだお」バイブルだ。
この本は、先生のエッセイ集大成であるばかりではなく、若い頃からのスナップなども収録されている。



在りし日の元気なお姿を見ていたら、僕はどうにも切なくなってしまったのだけれど、そんな気分も、先生のエッセイを読んでいたら癒された。
残念ながら先生はお亡くなりになってしまったけれど、珠玉のエッセイは不滅だ。
東海林先生、どうぞ安らかに。
どうぞ、どうぞ安らかに。


